伊藤忠商事は学生の就職人気の好感度が、商社の中でも常に高い会社である。丹羽宇一郎氏のような名経営者を輩出する風土が学生人気の理由のひとつかもしれない。本書を読むと丹羽氏はまるで「よい経営者はよい教育者である」と述べられた伊丹敬之氏(一橋大学名誉教授)のモデル人物というようにも感じられる。なぜならバブルに踊った日本や各企業の汚れた思想とすさんだ心をクリーンにするために伊藤忠商事のみならず日本に高い啓蒙を行なったたぐい稀な経営者であるからである。
丹羽氏は学者と言っても良いぐらいの読書量をほこりアダムスミスの古典をはじめ、常に考えながら本を読みそれを経営にも実践されているので、その発言は説得力がある。丹羽氏は「他の人に厳しく言うならば、自分も身を律して決して甘やかさない」という姿勢で首尾一貫しており、この姿勢に素直な心を持った人であるならば共感を覚えるであろう。
リーダーでなかなか丹羽氏のような「有言実行」を実現できる人は少ない。伊藤忠商事の3950億円という不良資産の大掃除をした後、新生伊藤忠商事を創設し不動の人気企業に立て直した手腕は企業の経営者のみならず個人もその軸になる考え方は大いに参考になろう。
本著は日経ビジネス掲載記事60項を短編にまとめているので、気にいったところから読めばよいので読みやすい。丹羽氏と同じく「批判的に考えながら読む」という姿勢で読むと効果は大きい。伊藤忠商事は特に中国ビジネスに力を入れているが、その理由が1章に示されており「中国悲観説」に対して「中国発展説」を展開され興味深い。ここを読むと中国に対する見方に認識が深まる。“クリーン丹羽宇一郎氏”の名講義を聞いてクリーンな感動を覚えよう!