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新リア王 下
 
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新リア王 下 [単行本]

高村 薫
5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社 / 著者からの内容紹介

保守王国の崩壊を予見した壮大な政治小説、3年の歳月をかけてここに誕生!
父と子。その間に立ちはだかる壁はかくも高く険しいものなのか――。近代日本の「終わりの始まり」が露見した永田町と、周回遅れで核がらみの地域振興に手を出した青森。政治一家・福澤王国の内部で起こった造反劇は、雪降りしきる最果ての庵で、父から息子へと静かに、しかし決然と語り出される。『晴子情歌』に続く大作長編小説。

内容(「BOOK」データベースより)

息子たちに乗り越えられた父はひとり魂の荒野を目指す―21世紀初頭に小説が行き着いた、政治と宗教の極北。

登録情報

  • 単行本: 396ページ
  • 出版社: 新潮社 (2005/10/26)
  • ISBN-10: 4103784059
  • ISBN-13: 978-4103784050
  • 発売日: 2005/10/26
  • 商品の寸法: 19.2 x 14.2 x 3.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
架空の政治家の姿を借りて、実際の昭和の政治家の在り様をその一身にまとわされた
福澤一族の王たる榮という主人公。

その孤高の最終決断は、シェイクスピア劇の畳み掛けるラストの如く圧巻で、痛快。

作者は、男性だったら、斯様な人生の幕引きをしてみたかっただろうか。
きっと書き上げてさぞかし小気味良かったことだろうと、想像。

榮が唯一愛した晴子以外の女連の描かれ様には、女の嫌な面のオンパレードだったわけだが、
この榮の最終措置に、わたしも溜飲を下げた。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 紫陽花 VINE™ メンバー
形式:単行本
上巻の第一章は、口頭での榮の政談、彰之の宗教談義だけで哲学書風に構成すると言う破天荒な出だし。第二章で、ようやく<王>と一族の考察に入り、題名に沿って来た。作者に依れば<王>を創り出す要諦は「能動」だと言う。ならば崩壊の予兆は「閉塞」か ?

下巻も榮と彰之の宗教談義から始まる。政治家とは思えぬ高邁な精神と仏教知識を持つ榮。二人の会話は相変わらず抽象的な哲学論だが、卑俗な面を見せるのは彰之と言う皮肉。早速、男女間の「閉塞」が語られる。一方、榮の政談は国政を語っていた上巻では新鮮味に欠けたが、青森を焦点にした途端、迫真性を増した。原子力発電所と建設業界、原子力船寄港と漁業補償、地方におけるインフラ整備、地方の政治風土と中央政界との関係等の諸問題が生々しく精緻に語られ、作者の筆力を再認識すると共に、舞台を選ぶ眼にも感心した。抽象論に終始した上巻より物語に求心力があると思う。特に"金庫番"英世の造形が巧み。第三章中の「息子たち」は本作の中核とも言うべき榮の回想談で、<リア王>を踏まえて、<王>の危惧は"時代が自分を追い越して行く事"、<娘>の反乱は"資本主義のニヒリズム"と喝破する。余りに時宜を得過ぎた宣託で、現代社会の根本問題に毅然と対峙する作者の孤高の姿は、最早小説家の枠を越えてしまった感がある。榮が<サクラマス>が乱舞する幻想を見るラストも印象的。もう一つの反乱分子秋道の影と合田の登場は次作(未読)への伏線だろうが、三部作がどう収斂するのか楽しみである。

小説としての成否は兎も角、社会を覆う諸問題を「政治・宗教」を切り口として描いた作者の気概と透緻した思索は読む者を圧倒する。ただし、「現代のシェークスピア」ではなく、やはり「現代のドストエフスキー」と感じたが。表紙を飾るレンブラント画「瞑想する哲学者」は、まさに本作の象徴として相応しいと映った。
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17 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ナモ
形式:単行本
 政治家の父・榮と、宗教家の息子・彰之。シェークスピアはもとよりギリシャ悲劇の登場人物にも比肩しうる苛烈で美しく惨憺たる運命の下で、恐るべき人生を刻み続けていく福澤一族の父子。彼らの物語が鮮烈な言葉と迸るような文体によって叩きつけられ、読者はほとんど暴力的な引力で青森の茫々たる昏い雪の世界に放り込まれる。

 榮と彰之の息苦しいほどに張りつめた精神、あまりにも強靭すぎる自我、執拗に粘りつくような情念の、圧倒的な重量とその密度には絶句するより他はあるまい。人間的であるということは知的であるということであった時代の思考様式には驚愕させられる。これが近代というものかと。

 榮と彰之の敵は、迫り来る現代という時代であるとも読み取れる。彼らはこの得体の知れない敵に対して、近代の所産である“言葉”を武器として必死の抵抗を試みる。しかし彼らがどれほど言葉をつくして語り明かしても、彰之の息子・秋道に、それを聞くべき耳は無い。かくして父子の“言葉”は、白く虚無的な闇の中で無残にも暴力的に断ち切られる。そして、絶望の慟哭が響く。

 これは近代という“言葉”の時代の終焉を物語る悲劇である。また、従来の高村作品らしさも色濃い(美貌の主人公・彰之の禁欲的で粘着質で、ある意味ヘタレな性格と行動、その代表格である合田刑事の登場、圧巻としか言い様のない緻密な状況描写)。あらゆる角度から多様な楽しみ方が可能。次回作では舞台はいよいよ現代に移る。現代を生きる現代人として心より楽しみ。
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