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新リア王 上
 
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新リア王 上 [単行本]

高村 薫
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社 / 著者からの内容紹介

保守王国の崩壊を予見した壮大な政治小説、3年の歳月をかけてここに誕生!
父と子。その間に立ちはだかる壁はかくも高く険しいものなのか――。近代日本の「終わりの始まり」が露見した永田町と、周回遅れで核がらみの地域振興に手を出した青森。政治一家・福澤王国の内部で起こった造反劇は、雪降りしきる最果ての庵で、父から息子へと静かに、しかし決然と語り出される。『晴子情歌』に続く大作長編小説。

内容(「BOOK」データベースより)

55年体制を生きた政治家の王は80年代半ば、老いて王国を出た。代議士の父と禅僧の息子の、魂の対決。

登録情報

  • 単行本: 475ページ
  • 出版社: 新潮社 (2005/10/26)
  • ISBN-10: 4103784040
  • ISBN-13: 978-4103784043
  • 発売日: 2005/10/26
  • 商品の寸法: 19.4 x 14.4 x 3.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
まずは上巻の感想である。

晴子と彰之の母子の物語であった「晴子情歌」続き、榮と彰之の父子物語となっている。叙事詩と言っていいほどに、語りが深く長い。政治家の一日にしても、曹洞宗の作法や教えについて、あるいは出家時代の話にしても、ここまで克明に語りつくすことが本当に必要なのか、何のために書いているのかという気になる。辛抱のない読者は最初の数十ページで投げ出してしまうかもしれない。小説の長さや改行のない文章について不平や苦痛を表明する人は多いようだ。瑣末的な事象、特に曹洞宗などに関する哲学問答に関する批判も多い。

しかし、本当にこの小説は「長すぎる」のか?  私は否と考える。それが高村氏の小説作法なのだろうと。瑣末な事柄を積み重ねることでしか見えてこないものがある。それは彼女の小説で一貫しているし、研ぎ澄まされることはあったとしても、緩むことはない。

彰之がこれ程の修行を通しても仏教的境地には達することができなかったという挫折感を書くためには、あえて冗長なる文章を連ねる必要があったか。あるいは、榮の永田町での一日も同様。政治家の一日とはどういうものか、政治家とは何を考え、どういう人種であるのかということを彫琢しようとするならば、克明な一人称的記述が適切との作家としての回答であったのだろう。

最初の数章の「くどさ」は皮膚感覚として強烈な印象的を残す。あえて瑣末という批判を覚悟で描ききった高村氏の筆力に私は脱帽する。何だか分からない力に押されて、とにかく読む進めるというのが、本書に対する読書作法か。高村氏は小説にミステリーどころか、ストーリーも求めてはいない。それを求めると裏切られることは『晴子情歌』で経験済みである。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 紫陽花 VINE™ メンバー
形式:単行本
「晴子情歌」の続編であるが、題名からして「現代のドストエフスキー」から「現代のシェークスピア」へと幅を拡げる意図か。重い十字架を背負った作家の宿命ではある。地方を牛耳る政治家一族、国と地方の政治と金権の関係と構造、更に宗教を絡ませて描いた骨太の作品。時代設定も私の大学生時代から社会人時代に重なるもので、物語に生々しさを感じた。「レディ・ジョーカー」で娯楽作家と言う偽のレッテルを払拭した以降の作品は作者本来のものと言え、「書きたいものを書く」との姿勢が窺え頼もしい。

榮の政談、彰之の宗教談義は口頭にしては精緻過ぎるが、これが持ち味だろう。宗教を採り入れたのは政治・現実の混迷と宗教の体系の対比の意か。作者は政治家に<空>を求めている様である。私が同時代を生きたせいもあるが、政治面は大部の割には既知の情報が多く新鮮味が無かった。それにしても、これほど実名の政治家を入れての政談は、小説なのか時事放談なのか判然とせず、「書きたいものを書く」難しさを痛感させる。一方、仏行の描写も別の意味で破天荒で、仏教の解説書以外で、仏行や教義の問題をここまで突き詰めた書物は前代未聞であろう。宗教と言うよりもハイデッガーの意識論をも持ち出した哲学書の趣き。極論すれば、本作は人間の存在意義を問うた作品である。<リア王>をモチーフにしている以上、この後、<王>榮の疑心暗鬼、後継者問題と言った俗な世界に入る筈だが、その展開及び宗教・哲学との係わりが如何に描かれるか第二章以降に期待したい。

以下は作中の齟齬と私の勝手な願望である。

・角栄を保守本流、福田を反主流と記しているが"誤り"で、保守本流は福田の方。
・岩手四区も俎上に載せていれば現在の政局に"just fit"だった。
・「むつ」を話題にするなら、「非核三原則」や「安保密約」まで踏み込むべき。
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19 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By TaroTaro トップ500レビュアー
形式:単行本
読み始めるとその世界に一気に引き込まれるのだが、気軽には読み始めることができない作家。しかも大作ばかりだ。居住まいを正して読め!雑念を払ってから読め!そんな声が聞こえてきそうな作家。読む側にも緊張を強いる作家。わたしにとって高村薫とはそんな作家だ。

そんな作家が選んだ題材が政治と宗教(生臭物と精進物?)。舞台は青森。日経新聞の連載を何度か読んだ限りにおいてはミステリーの要素はなし。重そうだなぁという先入観があって長い間積ん読状態にあったのだが、読み始めると結局圧倒されっぱなしのまま上下巻を読み終えてしまった。
ただ、高村の人間観・宗教観に充分浸れたものの、一度読んだだけで理解できたという自信はない・・・。

ミステリーの要素は一切なし。政治家が実名で登場し実際に起こった出来事とリンクしている部分がエンタメ的要素といえるかもしれないが、政治の世界を描くにあたっての小道具に過ぎず主題ではない。それでもこれほどの大作を書き上げる力、そして、読む側に緊張を強いながらも一気に読ませる力、決して読みやすいとは言えないが「力」を感じる文体。いい意味での「重さ」「硬さ」を感じることのできる素晴らしい作家だと思うし、他の方が仰るとおり高村薫は「純文学」作家なのだと思う。

ただ、このまま進んでいけば、新たに獲得する読者よりも、離れていく読者の方が多くなってしまい、作品を発表する場所が狭まってしまうのではないか、という余計な心配をしてしまう。
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