この本は、意見が食い違った時、ポジティブな感情を相手から引き出すことで、交渉を成功させよう!という趣旨の本である。
一般的な交渉テクニックは同じ筆者が書いた「Getiting to yes」に紹介されており、この本はその補完的位置づけ。
一番の論点としては、どうすれば相手からポジティブな感情を引き出せるのか?になる訳なのだが、その疑問に対する、最もオーソドックスな回答としては「相手の感情の原因を理解し、対策を練る」があるのかもしれない。
しかし、交渉は限られた時間で行われるものであり、その時間の中で相手の感情を調査・分析して対策を練る余裕はないのが普通だ。
そのため、筆者は「人間なら誰もが持っている核心的欲求を知り、それを満たしてあげることで簡便に相手からポジティブな感情を引き出してしまおう!!」ということを提案している。
そのため、本の大半は人間の核心的欲求とは何か?どのようなものか?という解説と、どうすればその欲求を充足させることが出来るか?という方法論に割かれている。
「核心的欲求」の内容に共感できるか否かが、この本を愛せるか否かの分かれ目だと思うのだが、個人的には共感できた。
「人間が求める自分の意味(重要性)は、多くの場合、対人関係において生じる」という考えが、「核心的欲求」の前提条件なのだが、それに共感できたのが大きいのだと思う。
で、交渉学としての評価だが・・、交渉における感情の重要性に着目し、感情をマイナスと切り捨てるのではなく、生かそうとする試みは面白いし、一冊の本に体系化した労力に脱帽せざるを得ないが、交渉の方法論には言及していないので、そちらを求めている人にとっては肩透かしだと思う。その人には「Getting to yes」を薦めたい。
あと別の見方で、この本は人間の欲求について考察しているので、心理学に興味があれば読んでみるのも面白いかもしれない。人間性心理学のマズローの考えと重なる部分も多々あるので、興味があったらどうぞ。