1967年に研究社『新英和中辞典』の登場するまで,高校などで推奨されて使われていたのはこれであった。今や学習英和辞典は加速度的に進化を遂げ,特に文法・語法情報の量は飛躍的に増加した。しかしこの辞書にはそれは全くない。可算・不加算を示すCU表示も,【口語】【文語】といったスピーチラベルもほとんどない。あるのは訳語と用例と文化事情の説明,それに事物を示す挿絵だけである。いたってシンプルである。編者の河村重治郎は,辞書は「読ませる」ものでなくてはならないとした。さっと引いて訳語を知って終わり,ではなく,項目の意味と用例をすべて読ませて,その語の全体像を学習者につかませなくてはならないとしたのである。そのために二つの方針を立てた。一つは文型表示や語法解説などのこみ入った情報は載せないこと。(特に初級の)学習者が消化不良に陥り,辞書を読ませる上で妨げになると見たのである。CU表示や文型表示がなくとも,用例を読めば分かるとしている。もう一つは,用例を魅力的なものにすること。ほかの英和辞典に見られる無味乾燥な用例とはまったく違う世界が,この辞典には広がっている。英和辞典が一つの「読み物」であるかのような錯覚に陥るほど,意味の深い用例が随所に散りばめられている。これは他の辞書のまねできないところである。今次改訂では新しい語や意味の増補と用例の刷新が図られたが,魅力的な用例を盛り込むという基本線は変わっていない。こみ入った情報の辞書を使いこなせなくて悩んでいる方に,この辞書をぜひ薦めたいと思う。