我が国は、今大きな岐路に立っている。
国家的な財政破綻の危機、格差、自殺者の増加、年金・医療・介護保険などの行き詰まり。そしてこの度の大震災と原発事故等々。この国の進路はいかにあるべきか。メディアに流れる論調は、とにかく経済成長を進めていくというもの。「トリクルダウン論(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)する」を未だに主張する者もいる。本当にそうなのか。
このような経済成長至上主義の流れに、「ちょっと待てよ」と警告を発するのが本書である。すなわち発想を転換して福祉国家を建設しようとの提言である。
福祉国家構想にはには次の6つの柱よりなる、1.国家の責任による生活保障 2.福祉国家を運営する、税・財政政策 3.大企業本位の成長政策ではなく、地域と地場産業を主体とした経済政策 4.地域主権構想に対抗する福祉国家型地方自治体と民主的国家構想 5.原発の廃止と自然エネルギー主体のエネルギー政策 6.軍事大国化を阻止し自衛隊を合憲的なものへの改編である。
3部構成であるが、第2部の社会保障憲章2011の記述が詳しく、本書の「肝」である。つまり労働の権利、基礎的社会保障サービス(医療・福祉・介護・保育・高校までの教育)などの現物給付と利用時の自己負担無の原則。住居保障、重層的で空隙のない所得保障による普遍的な貧困予防と救済、健康権保障、ナショナルミニマムとローカルオプティマムなどの具体的な提言がなされている。
この様な提言に、財政の問題を無視した全くの荒唐無稽の提言と言った批判が当然出るであろう。しかし新自由主義のもと、グローバリゼーションを推し進めた結果がこの国の現状である。現在の政治の昏迷が余りに酷く、メディアに登場する経済専門家が経済成長戦略を説いても、とても格差や貧困が是正されるとは思われず、結局は国民が希望を持てる未来社会像が見えてこないのである。
内容についてはいろいろ批判もあるが、この国の生き方を根本的に考えて見ようとした時、この書は参考になる一冊と思う。