「下流社会」が話題になり、ヒルズ族とニートが対比されている時代はまだ牧歌的だったのかも知れない。昨年佐野眞一氏のルポで東京都足立区の中学生の家庭で何と4割以上が就学に際し社会福祉の恩恵を受けているという事実が白日の下にさらされてから、事態は想像以上に深刻な問題として認識されたと思う。もはやこれは格差問題ではない。貧困問題である。本書では更に多くの数値・統計を挙げて、日本の現状を分析する。
本書にたびたび引用されているように、政財界の要人が「日本はまだ格差が少ない」というのは欺瞞である。先進国中では貧困率の度合いはトップレベルだ。「競争は悪いことじゃない(小泉元首相)」「皆さんそんなに困っているわけじゃないでしょ(福田首相)」発言の主は恵まれた二世、三世政治家である。
ディケンズ的社会と言ったような言葉が英語にはある。チャールズ・ディケンズは「オリヴァー・ツイスト」他の文学作品でと当時の英国の過酷な貧困層の実態を描いた。貧困層の研究は、英国の資産階級の人間が始めた。彼らは持てる者、知識階級の義務を理解していたのだ。
「自分とその子孫が資産を持つことができればそれでいい」と考えれば平和なのか。否、そうではなかろう。社会的階級の上昇が困難になり、希望が無くなった社会は疲弊する。不安になる。
高い税率にして福祉・平等社会にするか、犯罪の多い格差社会にするか、単純な二者択一ではないし、その度合いは判断が難しい。しかし「人生の満足度は金だけじゃない」と持てる者がうそぶくならば、この問題はもう少し考えた方がいい。
学者の書いた本にしては階級闘争を煽るような文章が多いが、これはあえて関心を喚起するためだと思う。いずれにしろ、読後深くため息をついた。