養老孟司氏との2冊の共著『ほんとうの環境問題』『正義で地球は救えない』の著者の担当部分それぞれを大幅加筆して1冊にまとめた新編集の文庫。評者は共著2冊も読んでいるが、著者の発言は共著の時点ではどこか断片的、または「トピックス重視」的だったのが、1冊に合本して加筆されたことで、論理の筋が一段と明瞭に見えてきた。「焼き直し」を読まされた、とは思いにくい出来上がりだ。
テーマは大きく分けて、地球温暖化と生物多様性の二つ。温暖化に向けては自然科学、政策、社会心理などのあらゆる側面についてほとんど全否定に近く、生物多様性についても、環境省が標榜する「外来種の排除」や「昆虫養殖の否定」などを批判する。現在または過去の特定の一時点の状況をベストと考え、その保全またはそこへの回帰を理念に掲げる「環境原理主義」に対する指弾も忘れない。「文庫のためのやや長いあとがき」では、2009年に発覚した「クライメートゲート」事件について要領良く紹介して、ニュース性も持たせている。楽しい読本となった。
しかし、これだけシャープな本を上梓しても著者に大人気が集まらず、むしろ感情的に反発する人が多いのは、なぜか。温暖化問題に向けては、著者が狭い意味での専門家ではないからか、あるいは時折筆が走って「アホ」「ペテン」などと書いてしまうからか、あるいは著書の物言いが「自信満々」に過ぎて鼻につくのだろうか。