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28 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
リアリストなのだろうか,
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レビュー対象商品: 新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書) (新書)
労働問題のみならず生活のあり方も含めて、議論されていくべき論点と方向性をコンパクトにまとめた良書であると思います。評者は、本書を戦後の労働運動のあり方をめぐってなされた「内包化・外延化」論争の現代版と位置づけます。企業別労組の枠を乗り越える「地域ぐるみ」の運動を展開した高野実に対して、大河内一男はそれを「外延化」と批判し、「経営の中に入り込む」ことによる企業別組合の補強(内包化)を主張しました。その後、日本の労働運動の主流は企業別組合によって占められる一方、地域の運動は○○ユニオンとして引き継がれました。 本書やブログなどの主張を読むと、濱口氏は「外で騒いでいるだけ」のユニオンより、企業別組合によって職場の民主主義が再構築されることを現実的だと考えているようです。つまり、外延化よりも内包化であると。確かに、企業別組合の変化、職場における民主主義の実現は重要課題です。しかし、「民主主義は工場の門前で立ちすくむ」と言われて久しいなか、主流の労働組合が自ら率先して民主的な組合運営、職場の民主化を進めていくと考えているのだとしたら、濱口氏を「リアリスト」だと評価することはできません。実際、今これほど労働問題への関心が高まっているのはユニオンが「騒いだ」からこそであり、主流の組合は腰が重いのが現状です。また、民主的な組合運営の模索を長年行ってきたのもユニオンなのであり、そうした活動を軽視して「新しい労働社会」を展望することはできないと考えます。 高野は、(民族意識のもと)内包化と外延化を分けて考える大河内の議論を批判しましたが、それは企業別とユニオンを分けて考える議論への批判にも通じ、敷衍すれば「ワーク」(職場)と「ライフ」(地域)が分かれてしまっている日本社会の現状ともつながるでしょう。濱口氏の「ワークライフバランス」に関する鋭い議論と労働運動へのバランスを欠いた視点の微妙なズレが気になったので、星を一つ減らしました。「民族意識」は「新しい労働社会」のメンバーシップの問題とも関連しますが、その議論は省略します。
46 人中、38人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
根本から問題を捉え返す力作,
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レビュー対象商品: 新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書) (新書)
この問題の専門家である著者は、「派遣切り」「名ばかり管理職」「ワーキングプア」「製造業への派遣」など現在生じている雇用問題を、個別的・表層的にではなく、国際比較と歴史的パースペクティブという大きな構図の中で捉え返す。日本特有の長期雇用や年功賃金制度も、それだけ見ていたのでは本質は分らない。本当の問題は、日本の雇用契約に「職務(ジョブ)」という概念が希薄なことにある。欧米では、特定の「職務(ジョブ)」を明確にし、その「職務」だけを行う労働を求めるのが雇用だが、日本では「職務」を決めずに一人の「人」を会社のメンバーとして雇う。不景気などで特定の「職務」の必要性が減れば、社員を別の「職務」へ移すから、「人」は長期にその会社のメンバーを続ける(→長期雇用)。また、「職務」が一定しないから、「職務」遂行能力で給与を決められない。そして日本の企業は「生活給」の考え方に立つから、子育てや教育費のかかる年代には給与が増える代わりに、20代の単身者の給与は低い(→年功賃金)。一方、「生活給」ではなく「同一労働同一賃金」制の西洋諸国では、子どもの養育や教育費用は、別に国などが手当てするから、中年社員の賃金が上昇しなくてもやっていける。このように、雇用制度は大きな構図で捉えないと、「なぜそうなっているのか」が理解できない。現代日本の問題は、正社員+専業主婦という標準モデルの「正規労働」には手厚い保護があるのに対して、家計支持者の庇護のもとにある主婦と学生のアルバイトをモデルとした「非正規労働」には低賃金を押し付けるという構造が、もう現実に合わなくなった点にある。「非正規労働」だけで生活せざるをえない若者が大量に出現し、「ワーキングプア」化したからだ。労働政策は政府・経営者・労働者の三者の合議で決めるという産業民主主義があるのに、小泉改革以来、利害関係者を排除した「哲人政治」化していることへの批判は鋭い(p210)。
25 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
頭が整理される会心の書物。,
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レビュー対象商品: 新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書) (新書)
非常勤職員ながら労働問題に係る仕事をさせてもらっている。非正規雇用労働者を使用する事業主に対して、労働基準法を監督する立場から啓発指導する仕事である。昭和42年に大学を出て以来、定年に到達するまで、人事労務の仕事一筋に従事してきた。臨時工を採用しては半年後には正社員に登用したり、家庭婦人を9時から16時30分までのパートとして採用し、結構な金額のボーナスも支給し、大切に使ってきた良き時代の思い出が私の労務管理の根底にある。 時代は移りバブルがはじける頃からわが国の労使関係は、なりふり構わず、人件費は単なるコストとして経営にとって負の側面ばかりを論じるようになってきた。成長期には、人材をコストと考える前に、いかに高いレベルの仕事をしてもらって、労働者の充実感を高めるとともに経営にとっても付加価値が増すことを考えていた。 そして今、労働基準法に係る仕事をしていて常に感じるのは、労働法制の不自然さである。労働現場をみていないタテマエ論が多く、仕事をしていても、何か矛盾を感じながらの日々であった。 もともと、労働法が専門ではない小生にとって、濱口先生を存じ上げたのはこの度の新書が初めてであった。頭の中のもやもやがスッキリと解消された気分である。 日本の「雇用」契約は「メンバーシップ」契約であること、そこに日本の労使関係の原点があることは同感であるし、加えて、私は日本人の中にある強い差別意識、常に自分よりも弱い立場の人間を作っておかなければ満足できないという「貧しい心」が作用しているのではないかと思っている。 現場の実態と、そこで働く労働者の気持ちをしっかりと踏まえて、労働関係の仕事をしていかねばと、気持ちを引き締めた次第。この書物は私にとって、座右の一冊になった。
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