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新しい中世―相互依存深まる世界システム (日経ビジネス人文庫)
 
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新しい中世―相互依存深まる世界システム (日経ビジネス人文庫) [文庫]

田中 明彦
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

相互依存が進む世界はどこへ向かうのか。ヨーロッパ中世になぞらえた「新しい中世」の概念で、冷戦後の世界システムを構想。世界の国々を、国境が薄れた「新中世圏」、国民国家たらんとする「近代圏」、秩序が崩壊した「混沌圏」の3つに分類し、移行期の世界を独自の視点で鋭く分析する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

田中 明彦
東京大学東洋文化研究所教授。1954年生まれ。77年東京大学教養学部卒業、81年マサチューセッツ工科大学でPh.D(政治学)取得。84年東京大学教養学部助教授。同大学東洋文化研究所助教授を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 362ページ
  • 出版社: 日本経済新聞社 (2003/04)
  • ISBN-10: 4532191734
  • ISBN-13: 978-4532191733
  • 発売日: 2003/04
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
我々が生きる21世紀は「新しい中世」になる? 突飛な発想に聞こえるかもしれないが、説明を読むと少なくとも面白い観点であることに気が付く。田中明彦が現代世界の一部を「新しい中世」と呼ぶ理由はおおまかに2つ。国境を越えた主体の多様性、それにイデオロギーの普遍性だ。

まず主体について。ヨーロッパ中世では神聖ローマ皇帝や各国の王に加え、教皇、修道院、騎士団、ベネチアやジェノバといった都市、北ドイツのハンザ同盟、パリやボローニャの大学など多様な主体が重要だった。また個人の帰属意識も複雑で、卓越した詩人や音楽家、騎士や参謀は常に一つの主君に仕えるとは限らなかった。確かに現代世界の一部においても、国家だけでなく、巨大企業、NGO、国際組織、宗教、民族団体、はたまた犯罪組織(テロ組織までも)などといった非国家主体の重要性が大きくなってきている(P. 198, 209-210)。

次にイデオロギー状況。主体の多様性に対し、中世ヨーロッパにおいて、思想的にはキリスト教普遍主義が支配的で、最高権威としてのローマ教会に挑戦するものはほとんどなかったという。現代世界もこの状況に似ている、と田中明彦。議論はあるにせよ、冷戦終結の結果、マルクス・レーニン主義の影響力はほぼ消滅し、自由主義的民主制と市場経済制に代わりうる現実に実効性を持つイデオロギーは存在しない、という(P. 200, 213)。

田中明彦は、このような世界政府(世界帝国)とも、主権国家システムとも異なる、ヨーロッパ中世と比較可能な状況が生まれつつある、という。もちろんこういった状況は世界のごく一部、いわゆる先進諸国に限られる。そこで著者は、自由主義的民主制と市場経済の成熟度・安定度を目安に世界を三分割し、1)新中世圏(米国、日本、ヨーロッパ諸国など)、2)近代圏(中国、インド、旧ソ連地域、東欧、南米、東南アジア、中東、アフリカ諸国など圧倒的多数)、さらに3)混沌圏(アフリカ諸国など)と名付けた。長期的に見ると、現在の世界システムはこれら3つの圏域が「新しい中世」に向けた移行期にある、というのがこの本の論点。(さらにこの3圏域それぞれに対し、異なった対応策が必要と提言する)。

なるほど面白い議論だけど疑問がないでもない。まずそんなにきれいに分れない。一国内においてですら、この3領域が見られる地域もあるし、第一、国内状況が国際社会に及ぼしうる役割について議論が乏しいのでは? 国境の垣根が低くなるならば、これまで以上に国内問題が国際問題化(逆もしかり)するだろうし、一つ一つの社会における変容も注目されていいと思う。

さらに関連して、それぞれの社会に内在するナショナリズムに対して楽観的過ぎないか。入江昭と同様、彼ら知識人の眼から見ればナショナリズムは、国境を越えたつながりや、地球的規模での相互依存体制への障壁、夾雑物に過ぎない。田中明彦は“「新しい中世」の国家にナショナリズムは必要ない”とまで言い切る(P. 282)。にもかかわらず、多くの、あまりに圧倒的大多数の人々にとって、ナショナリズムは決して消えることのない感情ではないか? さらに付け足せば、田中明彦は米国を「新しい中世」の筆頭に掲げるが、米国ほどナショナリズムが深く、構造的に根付いている社会も珍しいんじゃないかと思える。
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5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By tabasco
形式:文庫
 本書は世界政治を解釈する上での「観方」を提示するものである。その「観方」は「新中世圏」「近代圏」そして「混沌圏」の3つである。それぞれの圏域は、自由民主主義体制と自由主義経済の成熟度によって区別される。日本はもちろん「新中世圏」に属している。本書の題名である「新しい中世」という議論は、冷戦期に「英国学派」のH・ブルが主張した未来への展望の1つである。著者はそれを冷戦後(96年)の世界にあてはめ、そして世界の3つの圏域が「新しい中世」(主体の曖昧性・普遍的イデオロギー)の方向に進んでいると主張する。

 本書の提示したものは、あくまで「観方」の「仮説」なのだろう。そのため、こうした「観方」が果して適切なのかどうかより詳細に「実証」していく必要はある。加えて別のレビューアーの方も指摘しているが、圏域を区別する独立変数の不確かさ(分かり易いのは利点と言えるが)や、ナショナリズムを楽観視する姿勢には少し疑問(カナダのケベック州問題・他の先進諸国におけるナショナリズムの相対的高揚)を覚える。尤も後者は、これだけ大きな議論を行えば、どうしても出て来ざるを得ない些細な指摘といえるのかもしれない。

 しかし上記を差し引いても、冷戦の終結直後にこうした国際政治の「観方」を提示したことは、極めて価値があるように思われる。文章自体は平易で理解しやすいものとなっているので、全てを読んでも大して時間はかからなかった。本書の第7章と第8章だけでも読んで貰えれば、おそらく著者の主張の骨子は分かると思う。時間が無い方でもせめてそこだけは読んだ欲しいと思う一冊である。
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19 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By daepodong VINE™ メンバー
形式:文庫
 日本語で書かれた国際関係論の中では屈指の名著である。日経文庫に収録され、補遺がついた上に安価になり、手に取りやすくなったことは歓迎できる。
 内容は、現代の国際情勢を中世同様、多極化の時代と捉え、中世との共通点を挙げて分析している。国力をGNPと「民主化度」の二つの軸で分類する手法は応用範囲が広いと思われるし、GNPはマクドナルドの出店数とほぼ比例するというのは経済学的に見ても面白い現象だ。
 さて、この著者、本は文句なく薦められるのだが、時々テレビに出現してものしている発言は聞くに耐えない。大学系の方々の中にその手の特徴を持つひとはすくなくないようなので、テレビの印象で著書を読むかどうかを決定しないほうがいいらしい。
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