著者は現在、日本で教えられている世界史について、ヨーロッパ中心、日本視点、差異の強調という欠点があり、視点がゆがめられられてしまうことを、本書で指摘している。これにかわる「地球市民の世界史」として、時系列の排除、国家や民族単位でくくるのではなく、職能、地域などの人間集団からとらえた視点や同時代の地域同士をヨコでつないだ見方を提示する。確かに、7世紀の中東がすべてイスラムで沸き返ったわけではないだろうし、「19世紀のイギリスが産業革命や貿易で莫大な富を得た」と記述されても、そうでもない農民もいるのだろう。日本だって「震災後、不況の日本を生きている」と言っても、被災地と東京では、まったく見える生活の姿は異なるし、消費税増税やTPPだって反対もいれば賛成もいる。国家で歴史を語るのは、手っ取り早くて理解しやすいが、危うさもある。
しかし、本書の内容はかなり観念的でもある。著者は「興亡の世界史15」で本書で提示する歴史観でダイナミックなアジアの海洋史を描き高く評価されたが、高度に体系化され試験科目として適応した「世界史」として、著者の提示する「世界史」をどう教えるのだろうか、という気もした。