収録された29の短編のうち、「皇帝の使者」と「掟の門前」が特によかった。
自己の外にひろがる巨大で不可知の世界。また、その世界が主人公にあたえる脅威。
カフカ作品に、往々にしてみられるテーマである。
巨大な世界を駆けてくる「皇帝の使者」が期する「おまえ」との邂逅。
はたして「使者」は進んでいるのか、いないのか。
確かなのは、巨大な世界の頂点に君臨する「皇帝」は、なぜか、その世界の一点でしかない「おまえ」を選んだということである。
「掟の門前」で相対する「男」と門番。「男」は門を抜けたいが、この門をくぐっても、まだまだ門は続くという。めまいを覚えるような巨大で不可解な世界。ラストで、世界と「男」との特殊な関係が判明する。
とてつもなく巨きくまた不明な世界。そのなかの小さな点でしかない自己。しかし、その世界の意味は、逆ヒエラルキーのように自己と密接に関わっている。