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斧 (文春文庫)
 
 

斧 (文春文庫) [文庫]

ドナルド・E. ウェストレイク , Donald E. Westlake , 木村 二郎
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

自分より能力が上の連中を殺せば再就職は楽になる──リストラされた平凡な男の狂気を描き、冷たく静かな恐怖を呼ぶ傑作ノワール

内容(「BOOK」データベースより)

わたしは今、人を殺そうとしている。再就職のライバルとなる元同業者6人を皆殺しにする。この苦境を脱する手は他にないのだ―リストラで失職したビジネスマンが打った乾坤一擲の大博打は、やがて彼の中の“殺人者”を目覚めさせてゆく。ハイスミスやトンプスンに比肩する戦慄のノワール。ミステリの名匠の新たなる代表作。

登録情報

  • 文庫: 381ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2001/03)
  • ISBN-10: 4167527707
  • ISBN-13: 978-4167527709
  • 発売日: 2001/03
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 5.0 殺しになれてゆく一人称文体の恐怖, 2003/2/19
レビュー対象商品: 斧 (文春文庫) (文庫)
 本作品の主人公は失業により切羽詰まった状況に置かれ、心のバランスを欠いている。家族の心の問題に対処しながら、自分の売り込むべき専門技術で生計を立てたいと今でもずっと思っている。そのために自分と同等以上のスキルを持った人間を6人ばかりリストアップして彼らを一人一人殺してゆく計画を作り出す。

 殺しは仕方のないことで、自分をそう追い込んだのは世間だと彼は確信している。こんなことは早く終わらせてしまいたいのだ。家族を守るために。息子を育てるために。何よりも日常に平和と安定を取り戻すために。しかし、多くの殺人が心に積み上げてゆくのは、本質的な冷血。どこかで最初のうちに感じていた被害者への同情が徐々に冷え冷えとし、殺しはその度に残酷さを増し、躊躇がなくなり、大胆になってゆく。

 そうした殺しの履歴書を、ただひたすら丹念にこの物語は綴ってゆく。ぞっとするほどの恐怖。恐るべき一人称文体。

 殺人の一つ一つは決して同じものではないから読者を飽きさせることがない。その都度スリリングであり、淡々と描かれているのは心の壊れてゆく様子である。皮肉でブラックな結末と、その後への空虚な予感とが、さらなる冷気を吹きつけてくる。社会風刺を取り入れながらも、個人の狂気のきっかけを、大きな壊滅へとじわじわと表現せしめた非常に完成度の高い逸品であるとぼくは思う。

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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 2001年度「このミス」4位らしいです, 2004/6/1
レビュー対象商品: 斧 (文春文庫) (文庫)
「再就職のライバルとなる6人を皆殺しにする」。あらすじに書かれた突拍子もないこの一文に、現実味がないと感じた人こそはまってしまうと思います。

主人公は普通の中年男性。妻子もち。まじめで家族思いで頑固もの。その男が、リストラされて二年というギリギリの精神状態のなかで連続殺人を思いついてしまう。この平凡なおっちゃんが犯罪者になっていく過程や心理の描写がものすごくリアルで思いっきり感情移入してしまいました。特におっちゃんの格好悪さが哀愁をさそいます。殺人方法も不器用だったりして、やってることや言っていることは「無茶苦茶だ」と思いつつも嫌いになれません。最後まで引き込まれるようにして読みました。

ユーモアな箇所はあるものの、全体を通してシリアスなトーンでかかれたミステリーです。ドートマンダー・シリーズのようなコメディではありませんが、読み応えは十分。

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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 あすはわが身, 2006/2/26
レビュー対象商品: 斧 (文春文庫) (文庫)
「このミステリーがすごい!」の’01年海外編で第4位ランクインの異色作。

製紙会社をリストラされた中間管理職の‘わたし’は51才。もう2年間も失業中で、節約・倹約は当たり前、パートで勤め始めた妻に浮気をされたり、18才の息子は窃盗で逮捕されたり、家庭生活も崩壊寸前。彼の再就職への渇望はついに狂気となって彼を追い込む。

彼は製紙業の月刊業界誌にニセの求人広告を3号続けて出し、応募者の履歴書の中から彼と同等か、それ以上の能力・スキル・ノウハウを持ち、彼と同じ職種・ポストへの再就職を望む者を6人チョイスする。そして、あろうことか、彼らがいては自分が再就職する際の障害となるという理由で、次々と殺してまわるのだ。彼の殺人は再就職のためのポストを無理やり空けるため、ついに現職の同業・同職種の人物にまで及ぶ。

彼の連続殺人行為が‘わたし’という一人称で、日記風に実に淡々と、生活の一部のように語られているあたりは、まさに狂気と呼ぶにふさわしいほど異常であるし、読んでいてもシリアスを通り越して、ブラックな肌寒さをおぼえる。

本書は、平凡な現代人の奥に潜む狂気と、それが表に出たときの強烈な暴力をあぶりだした物語である。

と同時に、不況・リストラ・困難な再就職(特に中高年の中間管理職層)といった現代の経済状況・雇用事情を痛烈に風刺した小説でもある。いつ誰の身に降りかかってもおかしくない現実がそこにある。私も他人事とは思えず、それだけにいっそう怖いものを感じた。
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