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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「矛盾」の描写,
By かぶ (日本) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 斜陽 (新潮文庫) (文庫)
太宰の作品の特徴は「矛盾」が繊細に描写され、かつ矛盾に対して肯定的である点にあると思う。特に「斜陽」では登場人物が持つ矛盾同士の複雑な絡まり合いが絶妙なバランスで表現されていて、 太宰作品の中でも最も太宰の才能を感じることができる作品だと、僕自身は思っている。 母でありながら、上原の妻に微塵ともなろうとせず幸福を見出したカズ子 貴族出身でありながら貴族社会を嫌い、麻薬に手を出してまで死ぬ気で「大衆」になろうとした直治 生き切るために血を吐いてまで飲み歩く上原 などなど… ひとたび世の中の構造に目を向ければ、そこにはたくさんの矛盾が満ちている。 人はそのことを潜在的に知っているから、太宰の作品によって真理だとか共感めいたものを感じ取るのだろう。 矛盾に相対したとき、登場人物の答えもそれぞれ違った。 革命という形で自分の真理を創り上げたカズ子、犠牲となり死を選んだ直治。 しかしそこに優劣をつけるなく、肯定しているところに太宰の優しさみたいなものを感じた。 理解するというよりも、感じ取ることに神経を集中するべき作品だと思う。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ルサンチマンの文学,
By
レビュー対象商品: 斜陽 (新潮文庫) (文庫)
太宰治というとすぐに「人間失格」が挙げられるが、私は人間失格よりもこの「斜陽」のほうが素晴らしい作品だと思う。人間失格は没落していく一個の人間の姿にスポットを当てている物だが、これはそれぞれの登場人物が際立っていておもしろい。しかも、直治、かず子、上原は別々の人間ではなく、なぜか彼らが一人の「人格」を形成しているような気がするのが不思議なところ。 太宰文学は「人間失格」のイメージから「単に作者の自伝小説みたいなもの」というイメージがつき易いものだが、これを読めば太宰文学が「文学」と呼ぶに相応しいものであるということがわかるだろう。
14 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
今だから、面白い,
By
レビュー対象商品: 斜陽 (新潮文庫) (文庫)
もっと早くに読んでおけばよかったと思う本は、過ぎ去った若いころを舞台にしているから。でもこの本はまさに今の私ぐらいの年の人が出てくるから、早くに読んで「つまらない」と思って片づけておかなくて良かった、と思えるような作品だった。太宰は「暗い」というイメージはいつの間に作られたのだろう。最近私が読み始めた太宰には「暗さ」というオブラートに包まれた「生きる強さ、たくましさ」を中心に据えたものが多い。自殺願望の強かった太宰が本心とは反対の気持ちを文章に表したとは思えない。 死が「暗いもの」という気持ちは太宰にはなかったのではないか。私には「死」は「恋」や「幸せ」と同レベルで書かれているような気がしてならない。 そんな気持ちになれる内容だった。面白い、震えるほどに面白い。年をとればとるほど、面白味は増していくんじゃないかな・・・。
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