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斜陽 (ぶんか社文庫)
 
 

斜陽 (ぶんか社文庫) [文庫]

太宰 治
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きる一人の女。結核で死んで行く【日本で最後の貴婦人】のその母。昭和二十二年、死ぬ前年のこの作品は、作者の名を決定的なものにした。(石川 淳)
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

没落貴族の家庭。最後の貴婦人の母、麻薬中毒で破滅していく弟。そんな中、破滅への衝動を持ちながら女性の自立を考える“かず子”。新しいものを生み出すために、美しき滅びを望んだ太宰の悲愴なまでの心情を表した一冊。

登録情報

  • 文庫: 264ページ
  • 出版社: ぶんか社 (2009/10/15)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 482115319X
  • ISBN-13: 978-4821153190
  • 発売日: 2009/10/15
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (63件のカスタマーレビュー)
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最も参考になったカスタマーレビュー
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By かぶ
形式:文庫
太宰の作品の特徴は「矛盾」が繊細に描写され、かつ矛盾に対して肯定的である点にあると思う。

特に「斜陽」では登場人物が持つ矛盾同士の複雑な絡まり合いが絶妙なバランスで表現されていて、
太宰作品の中でも最も太宰の才能を感じることができる作品だと、僕自身は思っている。

母でありながら、上原の妻に微塵ともなろうとせず幸福を見出したカズ子
貴族出身でありながら貴族社会を嫌い、麻薬に手を出してまで死ぬ気で「大衆」になろうとした直治
生き切るために血を吐いてまで飲み歩く上原
などなど…

ひとたび世の中の構造に目を向ければ、そこにはたくさんの矛盾が満ちている。
人はそのことを潜在的に知っているから、太宰の作品によって真理だとか共感めいたものを感じ取るのだろう。

矛盾に相対したとき、登場人物の答えもそれぞれ違った。
革命という形で自分の真理を創り上げたカズ子、犠牲となり死を選んだ直治。
しかしそこに優劣をつけるなく、肯定しているところに太宰の優しさみたいなものを感じた。

理解するというよりも、感じ取ることに神経を集中するべき作品だと思う。
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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By mayuge
形式:文庫
太宰治というとすぐに「人間失格」が挙げられるが、私は人間失格よりもこの「斜陽」のほうが素晴らしい作品だと思う。

人間失格は没落していく一個の人間の姿にスポットを当てている物だが、これはそれぞれの登場人物が際立っていておもしろい。しかも、直治、かず子、上原は別々の人間ではなく、なぜか彼らが一人の「人格」を形成しているような気がするのが不思議なところ。

太宰文学は「人間失格」のイメージから「単に作者の自伝小説みたいなもの」というイメージがつき易いものだが、これを読めば太宰文学が「文学」と呼ぶに相応しいものであるということがわかるだろう。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ゆみ
形式:文庫
10代の頃に夢中になって読み、「あんな暗い話の何に惹かれたんだろう」と思いながら、おとなになって読み返してみました。
今読んでも、あの頃と同様、強烈な引力を持つ文章に、あっという間に夢中になりました。

名作相手に恐縮ながら、自分なりには、この作品の魅力は下記にあるのではと考えています。引用と共に記します。

【目が離せなくなるほどの、文章全体に漂う不吉さ、どんよりとした絶望感】
★とにかく暗く、今にも不幸が襲ってくるのではないかという不吉さに、つい目が離せない。何度も出てくる蛇のくだりは、あまりの禍々しさに戦慄。

「私の胸の中に住む蝮(まむし)みたいにごろごろして醜い蛇が、この悲しみが深くて美しい美しい母蛇をいつか、食い殺してしまうのではなかろうかと、なぜだか、なぜだか、そんな気がした」
「もうだめだ。だめなのだと、その蛇を見て、あきらめが、はじめて私の心の底に湧いて出た。お父上のお亡くなりになる時にも、枕もとに黒い小さい蛇がいたというし、またあの時に、お庭の木という木に蛇がからみついていたのを、私は見た」

【登場人物それぞれの生きる哀しみの、悲痛さ、美しさ】
★哀しくて、生きるのがつらくて、もうヤケになってる登場人物の気持ちが、なぜかすごくわかるような気がする…

「なんにも、いい事が無えじゃねえか。僕たちには、なんにもいい事が無えじゃねえか」(直治)
「私には、わからない。わかっているひとなんか、無いんじゃないの? いつまで経っても、みんな子供です。なんにも、わかってやしないのです」(お母様)
「死ぬ気で飲んでいるんだ。生きているのが、悲しくて仕様が無いんだよ。わびしさだの、淋しさだの、そんなゆとりのあるものでなくて、悲しいんだ」(上原)

【かず子の恋の情念のすさまじさ】
★ちょっとこれ大丈夫か、重すぎじゃないのかというぐらいのかず子の突っ走りっぷりが、暗い話の中でひときわ明るく燃え上がる炎のよう。

「私は、あなたの赤ちゃんを生みたいのです。他のひとの赤ちゃんは、どんな事があっても、生みたくないんです」
「私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。私ひとりの力では、とても消す事が出来ないのです。とにかく逢ったら、逢ったら、私が助かります」
「戦闘、開始。いつまでも、悲しみに沈んでもおられなかった。私には、是非とも、戦いとらなければならぬものがあった。新しい倫理。いいえ、そう言っても偽善めく。恋。それだけだ。(中略)私はいま、恋一つにすがらなければ、生きて行けないのだ」

【幸福とは何か、生きるとは何かを示唆することばの数々】
★はっとするような、人生を考えさせられるひとことが随所にあり、何度でも読み返したくなる。

「革命も恋も、実はこの世で最もよくて、おいしい事で、あまりいい事だから、おとなのひとたちは意地わるく私たちに青い葡萄だと嘘ついて教えていたのに違いないと思うようになったのだ。私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ」
「幸福感というものは、悲哀の川の底に沈んで、幽かに光っている砂金のようなものではなかろうか」
「ああ、何かこの人たちは、間違っている。しかし、この人たちも、私の恋の場合と同じ様に、こうでもしなければ、生きて行かれないのかも知れない。(中略)生きている事。生きている事。ああ、それは、何というやりきれない息もたえだえの大事業であろうか」

・・・ほかにも、【男性作家が書いたと思えぬリアルな女性のこころの描写】【恋が叶ったあとの空しさの描写の精緻さ】などなど、引用したい箇所がてんこもりです。

どのページを読んでも心を揺さぶる一文に出会えるような、一行一行が不思議な引力を放つすごい作品です。

本作品は太宰が愛人の太田静子の日記をもとに描いたということですが、ここまでの想いを寄せながらも、子どもの父親と添い遂げることなくシングルマザーとして生きた、一人の女性の寂しい生涯にも思いを馳せずにいられません。

ある女性の「犠牲」によって生まれたと言ってもいい、暗く重く哀しく、それでいてずるずると惹きつけられてしまう、紛れもない傑作です。
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