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斑鳩宮始末記 (文春文庫)
 
 

斑鳩宮始末記 (文春文庫) [文庫]

黒岩 重吾
5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

斑鳩の里の捕物帳。黒岩古代文学の決定版
調首子麻呂は、百済からの渡来系調氏の子孫、十八歳で厩戸皇太子(聖徳太子)に舎人として仕え、都を騒がす事件や陰謀を解決する

内容(「BOOK」データベースより)

調首子麻呂は百済からの渡来系調氏の子孫。文武に優れ、十八歳で廏戸皇太子(聖徳太子)の舎人になった。完成間近の奈良・斑鳩宮に遷った廏戸皇太子に、都を騒がす輩や謀叛人を取り締まるよう命じられた子麻呂は、秦造河勝や魚足らとともに早速仕事に取りかかるが、その矢先、何者かが子麻呂の命を狙う。

登録情報

  • 文庫: 315ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2003/01)
  • ISBN-10: 4167182351
  • ISBN-13: 978-4167182359
  • 発売日: 2003/01
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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20 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By くま
形式:文庫
いつかはこのような本が出てきてほしいと思っていた。『このような』とは古代を舞台にした推理小説のことである。言うは易し。作者も多分ずいぶん苦労して書いたはずである。歴史的なことで調べやすいのは政治的事件である。推理小説となれば、舞台は結局名も無い庶民の暮らしがほとんどになる。まだまだ分からないことだらけの世界である。だからといって丸きり空想で書いてはリアリティが無くなる。古代小説の一人者である黒岩氏だから書けた物語であろう。

婚姻形態はどうなっているのか。住居はみな一様に竪穴式なのか。戦争の影は村人たちにどのように影響していたか。人々の上下関係は。漢字の普及率は。商売はどのようにしていたか。信仰はどうだったのか。薬はどのようなものをつかっていたか。観察方法は。貧富の差はどのように現れていたか。衣服のバリエーションは。金の代わりの絹布はどのように使われていたか。都市から都市へ人はどのくらいの気軽さで動いたか。渡来系住民の意識は。これらのさりげない事をよく調べている、あるいは想像しているなあと思った。

『謎』のレベルは高くない。決して推理小説の傑作とは言いがたい。しかしこの分野の先駆けとしては記憶すべき作者であり本である。

この本を読み終えてしばらくして、黒岩氏の逝去を知った。最後の氏の作品群が古代の人たちの庶民の物語だと知って、私は「惜しい!」と思った。

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形式:単行本
この本は日本で初めての官司制度のもとでの、子麻呂「事件簿」を小説にしたてた作品集である。時代は推古年間、聖徳太子の頃、冠位十二階制や憲法17条が定められた頃。場所は斑鳩宮とそのあたりに設定されている。厩戸皇太子(聖徳太子)は冠位制(朝廷の役職に、能力があれば出身氏族の優劣に関わらずに抜擢)、憲法の制定に腐心していた。社会秩序を維持するために、犯罪の撲滅にも精力的である。

この時代に、何かしら事件が起きたときに真相をつきとめ、犯人逮捕の仕事に従事していたのが犯罪調査の下級官吏である調首子麻呂(ツギノオビトネマロ)であった[百済からの渡来系調(ツギ)氏の子孫]。

主人公は子麻呂。彼の家族は、妻の縫郎女(ウイノメ)[渡来系の書(フミ)氏の出]、長男の百舌(モズ)と長女のイト。他に登場する中心人物として、子麻呂の上司はやはり渡来系氏族の秦造河勝(ハタノミヤツコカワカツ)、補佐役に難波吉士魚足(ナニワノキシウオタリ)などいる。子麻呂は斑鳩宮で次々起こる殺人、暴力、収賄などの調査、犯人捜しにあたる。その様が生き生きと描かれている。

国際的には、隋が拡張政策をとり高句麗を虎視眈々と狙い、間隙をねらって新羅が朝鮮半島の南端に侵攻してくるという情勢。皇太子はこれを迎え撃つ準備をする一方で、国内的には古い慣習を打破し、正義を基本とした新しい政治を執る。皇太子の意気込みは、時代の新しい息吹として聞こえる。そうした空気の中で、人間としての歓び、懊悩、欲を抑えながら、犯罪の取り締まり、事件の解決にあたる子麻呂。彼の仕事振りをたどる「子麻呂道」「川岸の遺体」「子麻呂の恋」「『信』の疑惑」「天罰」「憲法の涙」「暗殺者」の6編の作品。

今までに接したことのない小説の世界がそこに広がっている。新境地である。
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By 朝犬
形式:文庫
ときは西暦六百年。警察黎明期の犯罪&捜査を描く連作短編集。

くまさんの素晴らしいレビューがほとんど言い尽くしてますが、あっしも間抜けな蛇足をつらつらと。

著者前書きによれば、この聖徳太子の時代、警察や司法が制度として整っていたかどうかは不明。ただ時代的に整っていてもおかしくはなく、とくに太子は「官司制度に熱心であった」ので、そこからこの画期的な「奈良の都の捕物帳」が構想されたようです。

江戸の捕り物とはだーいぶ雰囲気が違います。登場人物の名前からして。主人公は子麻呂(ねまろ)、妻は縫郎女(ぬいのいつらめ)、長男は百舌(もず)、長女はイト。子麻呂の職種は舎人(とねり=皇太子の側近)の長(おさ)で、部下の名は魚足(うおたり)。セリフの一人称は「吾」。このあたりの字面に抵抗があると、物語に入り込むのがちときついかも。

文化風俗ももちろんぜんぜん違います。普通に「奴婢」がいて、民は竪穴式住居に住み、手で食事し履(くつ)をはかない。貴族だって土器の椀で水を飲む。子麻呂は自分で野山に開けた道を駆け足で通勤するし(笑)。くまさんが書かれているように、黒岩氏が縦横無尽に資料と想像力を駆使しているのでしょうな。

ただこうした設定さえクリアすれば、江戸時の捕り物でも現代の警察小説でも、同じですわな。既得権益の牙城があり、そこが様々な問題の温床になり、主人公が問題を解決しようとがんばる。ここでは理想家=聖徳太子、理想に共鳴する熱血漢=子麻呂、子麻呂の手足となる現場主義者=魚足の正義のラインが悪に挑みます。

農民や奴婢は横暴な貴族に虐げられ、虐げられる者の中でまた虐げる者と虐げられるものが生まれる。うずまく欲望、人情の機微、権力争い、いがみ合い、殺し合い、、、、。人間ってやつぁ、同じですねぇ。

時代設定も大いに関係あるとは思いますが、黒岩氏らしい濃いィ世界が展開されます。濃密な七十年代的空気(実際は平成9ー11年にかけて順次発表された作品。読んでいて勝新の座頭市の空気感が過ってしょうがなかった)。草食系から見れば過剰すぎますがなというエロス(ほぼ変態)。波乱の人生を送ったこの戦前作家が当たり前に持っていた知性と生命力にたじたじです。現代の作家ではぜったいに味わえないなにかがあります。

シリーズでずっと読みたかったなあ。ほかにないもの。黒岩氏が亡くなられたのがかえすがえすも残念。だれか他の作家が書き継いではくれないだろうか、、、。

長々と褒めてるわりに☆二つなのは、小説としてはおもしろくなかったから。すみません。
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