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文明の接近 〔「イスラームvs西洋」の虚構〕
 
 

文明の接近 〔「イスラームvs西洋」の虚構〕 [単行本]

エマニュエル・トッド , ユセフ・クルバージュ , 石崎 晴巳
5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 2,940 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「MARC」データベースより)

独自の人口学的手法により、イスラーム圏の現実と多様性に迫る。イスラーム諸国とキリスト教系の諸国との間に存在する差異は、本質的な、本性上の違いではなく、時間的ずれに由来する差異であることを示そうと試みる。

メディア掲載レビュー

アメリカの終焉を謳い、世界的ベストセラーになった『帝国以後』の続編、緊急出版!
欧米のイスラーム脅威論の虚構を暴き、独自の人口学的手法により、イスラーム圏の現実と多様性に迫った画期的分析! --PR誌『機』

登録情報

  • 単行本: 298ページ
  • 出版社: 藤原書店 (2008/2/25)
  • ISBN-10: 4894346109
  • ISBN-13: 978-4894346109
  • 発売日: 2008/2/25
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.6 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 89,427位 (本のベストセラーを見る)
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15 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 仮面ライター VINE™ メンバー
形式:単行本|Amazonが確認した購入
  
 本書は言うまでもなく、サミュエル・ハンチントン教授が首唱した「文明の衝突」論へのカウンターとして書かれた書物である。著者のエマニュエル・トッドとユセフ・クルバージュの両氏は「全世界的な人口動態分析の用具」を駆使して、「イスラーム圏は現在、人口学的・文化的・心性的革命に突入しているが、その革命こそ、かつて今日の最先進地域の発展を可能にしたものに他ならない」とし、「イスラーム圏もそれなりに、世界歴史の集合点に向かって歩み続けている」(序章)とする。そして、イスラーム圏で発生している混乱は、「人口学的移行過程」に特有の「(伝統的社会から近代社会への)移行期危機」としてピューリタン革命やフランス、ロシアの革命などと重ね合わせるのである。

 これらの“切り口”は、男女の「識字化(識字率の向上)」であり、私なりに単純化すると、「識字化(文化的近代化)→出生率低下(伝統的権威構造の崩壊)→移行期の政治的混乱(移行期暴力)」といったシェーマが描かれよう。そして、トッド博士らは人口学的知見等に基づいて、イスラーム圏は「近代化」に向かっての“産みの苦しみ”を味わっている、とする。ここで私は、先ず、一つの目的に向かう「世界史の必然的な歩み」といったヘーゲル主義的なパースペクティブにやや戸惑いを覚える。また、当書では、文明モデルの分岐は否定するするものの、“移行先”を語ってはいない。それは欧米型社会モデルを意味し、そこへ「大規模かつ急速」にイスラーム圏は収斂していくのであろうか。

 ハンチントン教授の「文明の衝突」論に関しては、たとえばアマルティア・セン博士の厳しい批判などが思い浮かぶ。セン博士は「世界の人々をたった一つの排他的な基準(いわゆる文明のこと−引用者)に特化して区分け」する「粗雑さ」を批難し、人々の「アイデンティティーの複数性」を強調する。そして、博士は「私たちが問わなくてはならないのは、敬虔なイスラム教徒がその人の宗教的な信仰や実践を、宗教以外のコミットメントや価値観その他の個人的なアイデンティティーの特徴とどのように組み合わせるのか」に力点を置く。セン博士の母国インドにおいては、「俗に「イスラム世界」と呼ばれるほとんどの国よりもずっと多いイスラム教徒を抱えているのが変わらぬ事実」であるのだから…。
このレビューは参考になりましたか?
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By motofji VINE™ メンバー
形式:単行本
 ハッチントンの『文明の衝突』や「イスラーム教イコールテロリスト。イスラーム教と近代化や民主化は相反していてイスラーム教である限り民主化は無理」という欧米人が持っている"常識"への反論。
 トッドの主張は、「民主化に宗教の影響はそれほど大きくない」むしろ「識字率の向上や家族制度の影響の方が大きい」というものだ。
 トッドの言う民主化のプロセスは、識字率の向上=>家庭内の力関係の変化(父や母は字が読めないが子供は読める)=>家族計画の普及=>合計特殊出生率の低下=>民主化と収斂されるという。この過程でそれぞれの社会の家族制度(外婚制か内婚制か一夫多妻か)や家族に対する価値観(特に女性に対する価値観)によって異なる様相をたどる。
 また必ずしも一本道をたどるのではなく、ジャコバン派やナポレオンによる帝制やナチズムや日本の軍国主義やイランのような宗教国家のような反動的な政治体制が生まれることがあるというが、いずれ、民主主義に修練していく。
 トッドは、識字率や合計特殊出生率の変化や家族制度の事例を多数挙げて主張を補強している。欧米人は民主主義国=キリスト教国vs非民主主義国=イスラーム教国という単純な分類でものを語る。トッドはそれを否定し、同じイスラーム教国でも、北アフリカ諸国と中央アジア諸国とアラブ諸国と東南アジアでは、家族制度が異なり、女性の価値観が異なることを明らかにし、欧米人の単純な図式の危険性を強く主張している。

 民主主義国=キリスト教国vs非民主主義国=イスラーム教国という単純な分類の危険性は、トッドの考えに賛同する。また、宗教より家族制度や女性に対する価値観の違いの方が、人々の考え方に与える影響は大きいというのも納得できる。
 しかし、トッドの論は、所々、飛躍があり、納得できない。例えば、国によっては識字率向上より合計特殊出生率低下が先に始まっている国がある。その理由は語られていない。私はそれはテレビの影響ではないか、と思うのだが・・・。また、どんな国も民主主義に収斂化する、というのも、あまりに単純な図式だと思う。さらに、ジャコバン派やナチズムや日本の軍国主義や現在のイランに対する考察も、疑問符をつけざるをえない。
 所々、疑問点はあるが、識字率や出生率低下や家族制度と政治制度を結びつけて考えるという視点は興味深いし、キリスト教vsイスラーム教、あるいは民主主義vsイスラーム教という単純な図式より、トッドの主張は評価できる。
このレビューは参考になりましたか?
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By dream4ever VINE™ メンバー
形式:単行本
文明の接近 エマニュエル・トッド他 藤原書店 2008

某大国は常に対立軸を設定しようとしているしか思えないのである。
9.11以降は特にそうではないだろうか?
そんな対立が不要である事を本書は綴っている。

識字率、幼児死亡率、人口動態、家族形態、結婚形態、出生調整等を指標に世界の動きを解析する。
個々の国、宗教や宗派の違いを超えて存在するある種普遍的な世界の流れが明らかな様に思う。

分類し、分離し、差別化しようとする流れに対して、毅然と我々は対抗する事が望まれているのだろう。

備忘録的メモ
自分達の通った道をこれから辿ろうとしている国々を、驚きの念を持って、さらには上の者が下の者を見下す態度で、眺めるわけである。このような展望の誤りは、歴史的自覚の水準がきわめて低いということがヨーロッパやアメリカ合衆国の特徴であるという秘密を暴露してみせるものだ。
近代化の衝撃は女性識字化と性行動の変貌によって男性優位の原則(権威関係)の崩壊により激しさを増す。
イスラーム教は人口動態に影響を与えない(結論)
今日、経済のグローバル化によって不安に陥った世界においては、分類し、分離し、そしてもちろん断罪しようとする誘惑は強い。それに、人々の精神の中に文明の衝突というイメージがどっかと腰を据えると、得をする大国もあれば、研究者もいる。この文明の衝突なるものの下には、経済的衝突の潜在的な暴力性が隠れているのである。人口学は、このような道具化された偏執病から人々を解き放ち、もっと先まで進むことを許してくれる。世界各地の住民は、文明と宗教を異にするけれども、収斂の軌道に乗っている。出生率指数の収斂は、われわれが将来へと、それも近い未来へと想いを馳せることを許してくれるのである。その近い将来においては、文化的伝統の多様性は、もはや衝突を生み出すものと知覚されぬようになり、単に人間の歴史の豊かさを証言するものとなるだろう。

訳者解説
「移行期危機」の概念;識字化進むということは、文盲の親の世代との断絶が起こるということ、すなわち不変と見えた伝統的との絶縁が実行されるということであり、社会は流血と殺戮の局面に入ることになる。この期間のことを、ドットは伝統的社会からの近代社会への「移行期」と規定し、そこに展開するイデオロギー的発熱と流血の現象を「移行期危機」と称するのである。イングランドのピューリターン革命、フランス大革命、ナチズムの勃興、日本軍国主義等々が具体的現れである。
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