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15 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
人口学的知見に基づいた「文明の衝突」論批判,
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レビュー対象商品: 文明の接近 〔「イスラームvs西洋」の虚構〕 (単行本)
本書は言うまでもなく、サミュエル・ハンチントン教授が首唱した「文明の衝突」論へのカウンターとして書かれた書物である。著者のエマニュエル・トッドとユセフ・クルバージュの両氏は「全世界的な人口動態分析の用具」を駆使して、「イスラーム圏は現在、人口学的・文化的・心性的革命に突入しているが、その革命こそ、かつて今日の最先進地域の発展を可能にしたものに他ならない」とし、「イスラーム圏もそれなりに、世界歴史の集合点に向かって歩み続けている」(序章)とする。そして、イスラーム圏で発生している混乱は、「人口学的移行過程」に特有の「(伝統的社会から近代社会への)移行期危機」としてピューリタン革命やフランス、ロシアの革命などと重ね合わせるのである。これらの“切り口”は、男女の「識字化(識字率の向上)」であり、私なりに単純化すると、「識字化(文化的近代化)→出生率低下(伝統的権威構造の崩壊)→移行期の政治的混乱(移行期暴力)」といったシェーマが描かれよう。そして、トッド博士らは人口学的知見等に基づいて、イスラーム圏は「近代化」に向かっての“産みの苦しみ”を味わっている、とする。ここで私は、先ず、一つの目的に向かう「世界史の必然的な歩み」といったヘーゲル主義的なパースペクティブにやや戸惑いを覚える。また、当書では、文明モデルの分岐は否定するするものの、“移行先”を語ってはいない。それは欧米型社会モデルを意味し、そこへ「大規模かつ急速」にイスラーム圏は収斂していくのであろうか。 ハンチントン教授の「文明の衝突」論に関しては、たとえばアマルティア・セン博士の厳しい批判などが思い浮かぶ。セン博士は「世界の人々をたった一つの排他的な基準(いわゆる文明のこと−引用者)に特化して区分け」する「粗雑さ」を批難し、人々の「アイデンティティーの複数性」を強調する。そして、博士は「私たちが問わなくてはならないのは、敬虔なイスラム教徒がその人の宗教的な信仰や実践を、宗教以外のコミットメントや価値観その他の個人的なアイデンティティーの特徴とどのように組み合わせるのか」に力点を置く。セン博士の母国インドにおいては、「俗に「イスラム世界」と呼ばれるほとんどの国よりもずっと多いイスラム教徒を抱えているのが変わらぬ事実」であるのだから…。
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5つ星のうち 5.0
宗教は対立軸ではない。移行的危機に過ぎない,
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レビュー対象商品: 文明の接近 〔「イスラームvs西洋」の虚構〕 (単行本)
文明の接近 エマニュエル・トッド他 藤原書店 2008某大国は常に対立軸を設定しようとしているしか思えないのである。 9.11以降は特にそうではないだろうか? そんな対立が不要である事を本書は綴っている。 識字率、幼児死亡率、人口動態、家族形態、結婚形態、出生調整等を指標に世界の動きを解析する。 個々の国、宗教や宗派の違いを超えて存在するある種普遍的な世界の流れが明らかな様に思う。 分類し、分離し、差別化しようとする流れに対して、毅然と我々は対抗する事が望まれているのだろう。 備忘録的メモ 自分達の通った道をこれから辿ろうとしている国々を、驚きの念を持って、さらには上の者が下の者を見下す態度で、眺めるわけである。このような展望の誤りは、歴史的自覚の水準がきわめて低いということがヨーロッパやアメリカ合衆国の特徴であるという秘密を暴露してみせるものだ。 近代化の衝撃は女性識字化と性行動の変貌によって男性優位の原則(権威関係)の崩壊により激しさを増す。 イスラーム教は人口動態に影響を与えない(結論) 今日、経済のグローバル化によって不安に陥った世界においては、分類し、分離し、そしてもちろん断罪しようとする誘惑は強い。それに、人々の精神の中に文明の衝突というイメージがどっかと腰を据えると、得をする大国もあれば、研究者もいる。この文明の衝突なるものの下には、経済的衝突の潜在的な暴力性が隠れているのである。人口学は、このような道具化された偏執病から人々を解き放ち、もっと先まで進むことを許してくれる。世界各地の住民は、文明と宗教を異にするけれども、収斂の軌道に乗っている。出生率指数の収斂は、われわれが将来へと、それも近い未来へと想いを馳せることを許してくれるのである。その近い将来においては、文化的伝統の多様性は、もはや衝突を生み出すものと知覚されぬようになり、単に人間の歴史の豊かさを証言するものとなるだろう。 訳者解説 「移行期危機」の概念;識字化進むということは、文盲の親の世代との断絶が起こるということ、すなわち不変と見えた伝統的との絶縁が実行されるということであり、社会は流血と殺戮の局面に入ることになる。この期間のことを、ドットは伝統的社会からの近代社会への「移行期」と規定し、そこに展開するイデオロギー的発熱と流血の現象を「移行期危機」と称するのである。イングランドのピューリターン革命、フランス大革命、ナチズムの勃興、日本軍国主義等々が具体的現れである。
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5つ星のうち 4.0
普遍主義に基づく楽観論,
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レビュー対象商品: 文明の接近 〔「イスラームvs西洋」の虚構〕 (単行本)
文明の差異を強調するのではなく普遍的な視点でイスラム圏の国々でどの程度近代化(識字化、少子化)が進んでいるかを分析している。「途上国=子沢山」といったイメージを持っていたが、トルコ、イランを始めとしてインドネシアなど多くの国では既に出生率が2.5人未満になっている。一昔前は『「発展途上国」という言い方は皮肉で実態は停滞してる』などと言われたものだが、出生率の数値からは既に多くの国で近代化が進んでいる事が分かった。 フランスでもイスラム圏の国々での混乱やヨーロッパに押し寄せる移民を脅威に感じている人が多いが、この本を読むと混乱は今がピークで時間が経てば安定するという楽観的な見通しが得られた。 日本で出生率が低下した年代を他国と比べると、イタリア、スペイン、ロシアと同じ頃で、日本の近代化がヨーロッパの後進地域と比べて大きく遅れていたわけでもない事がわかる。 表もいくつか掲載されているが、文章の中に出生率や識字率の数値が多く出てきて読みにくい。アフリカなどの馴染みのない国名が多く出てくるので世界地図を横に置きながら読んだほうがいい。また、インドは大きいので州別に分析している。 ハンチントンの「文明の衝突」とは違って、厚さが普通なのがいい。
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