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文明としての江戸システム (日本の歴史)
 
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文明としての江戸システム (日本の歴史) [単行本]

鬼頭 宏
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 『日本の論点(2002)』にも寄稿している歴史人口学の権威、鬼頭宏が、「人口」という切り口で江戸の政治、経済、社会を論じている。ドラッカーが『ネクスト・ソサエティ』(原題『Managing in the Next Society』)で少子高齢化のインパクトを論じたように、社会の変化をとらえるには、人口論的アプローチが不可欠である。本書は、その人口が何によって変化し、またそれがどうやって社会に影響を与えるのかを示した点で興味深い。

   江戸時代というと、とかく古めかしい印象がつきまといがちだが、そこには驚くべき事実と、現代へのヒントが隠されている。離婚や再婚が頻繁に行われていた、というのも興味深いが、何よりも文明が発達する過程で人口が増加し、成熟するにしたがって晩婚化・少子化が進んだという現代にも通じる変化に注目したい。

   さらに、現代の金融政策にあたる貨幣改鋳とそれがもたらした幕末インフレーション、幕府財政の赤字、急激な物価の上昇によってもたらされた農民一揆や打ちこわしなど、現代に生きるわれわれにとっても決して無視できない歴史的事実が述べられている。ちなみに幕末のインフレ時には米価が約11倍になり、「都市でも農村でも、賃金の上昇はつねに物価上昇に遅れをとったから、実質賃金は1880年頃までは低下する傾向にあった」という。これが「企業家にとっては利潤拡大を意味し(中略)旧来の都市商家のような金融資産をもつ者には不利に働き、地方の実物資産をもって事業をおこなうような者には有利に働いた」。

   このように、本書にはビジネス・経済をはじめ、あらゆる分野に応用できる知恵が詰まっている。単に経済動向を読むだけでなく、その結果人々の生活がどうなるか、家族や人間関係がどうなるか、そのヒントを示したという点で、本書の意義は大きい。(土井英司)

出版社/著者からの内容紹介

緑の列島の持続的成長モデル

豊かな自然に依存した徳川文明は、国際的には〈近代世界システム〉と〈冊封体制〉に対抗して〈日本型華夷秩序〉を形成し、国内では幕藩体制のもと、各領国が拡大する市場経済により統合されていた。
発達した貨幣制度、独自の〈物産複合〉、プロト工業化による地方の発展、人口抑制――環境調和的な近世日本のあり方に、成熟した脱近代社会へのヒントを探る。

登録情報

  • 単行本: 348ページ
  • 出版社: 講談社 (2002/6/7)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062689197
  • ISBN-13: 978-4062689199
  • 発売日: 2002/6/7
  • 商品の寸法: 19 x 13.4 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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形式:単行本
 本巻は歴史人口学が専門の著者による近世日本社会の分析だ。最初に日本史全体の長期的な人口趨勢が示されるが、そこに認められるのは人口増加と停滞を繰り返すサイクルだ。すなわち、縄文、水稲農耕化、経済社会化、工業化という4つのサイクル、言い換えれば4つの文明システムだ。そのうち「経済社会化システム」のサイクルというのは少々わかりにくい。これは15〜17世紀の人口増加と18世紀の人口停滞状況を指しているが、この変動は貨幣の普及・市場経済の浸透と密接にかかわっているという。著者は農業社会を、室町時代あるいは南北朝の頃を境にして大きく二つに分ける。土地に基礎を置く農業中心の社会という点は同じだが、経済システムはその前後で大きく異なるのだという。

 市場経済の浸透は農民にどんな影響を与えたのだろうか。生産目的として自給および貢納以外に「販売」という要素が加わることにより利得動機が生まれる。利潤増によって生活水準の向上が可能なことを知った農民は生産高を増やそうとして、日本型水稲農耕に適する生産高アップの手段である、土地利用の高度化と投下労働量の増大に努力を傾けていく。

 また労働力の質についてみれば、自発的労働意欲の低い隷属農民や融通の利かない牛馬等の家畜利用よりも、イエのためなら勤勉に長時間働き、かゆい所にも手が届く家族労働を中心にするほうがよい。それゆえ家畜数が減少するとともに、晩婚あるいは生涯未婚者が多かった傍系親族や隷属者を抱えていた大家族から、直系親族以外の者が自立していき、家族数の減少による世帯構造の変化へと帰結していった。さらに著者は、戦国時代にはこの変化が始まっていた経済先進地域の濃尾平野の状況を熟知していた豊臣秀吉が、一地一作人を原則とする太閤検地を行うことによって、政治的に小農単位の農業経営の自立を促したのだと論じているが、さすがは農民出身の天下人秀吉だなと感心した。
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