文学理論の入門書だが、決してガチガチの構成ではなく、『デスノート』や『蹴りたい背中』などの最近の作品を豊富に取り扱っており、諸学者にも読みやすい構成になっている。
なので、本書はとてもわかりやすい入門書となるであろう。
ではなぜ評価が低めかというと、筆者の「書き方」ではなくてむしろ本書で紹介されている「文学理論」それ自体についての評価による。
本書の多くで用いられているのはポストモダン的な文学理論で、作品の内容を「性的欲求」「性的シンボル(ペニスなど)」「去勢」などといった「すべては性的なもので説明できる」といった精神分析チックな枠組に押しこんで解釈する方法をとっている。
こうした解釈が「作品の内容をより豊かにするか」と言われると甚だ疑問であり、ラカンなどの世界観を信奉する人が、自らの世界観に合致するように作品を強引につなぎ合わせ、自らの世界観の整合性を再確認し安心する以上の有意義さははっきり言って見出せなかった。
上記以外の方法にしても、あらかじめ枠組を用意しておいて、その枠組みに作品を押しこんで解釈するというタイプの方法が多く、「そのような解釈をとることでどういう意味があるのか(読みが豊かになるのか)」という問いに答えられないように思えた。
なので、本書で面白いと思えたのは、最初から「多くの作品は以下のどれかに分類できます」と正面切って宣言して、その類型化を行うような部分であった。
例えばフライの
批評の解剖 (叢書・ウニベルシタス)から引いている、主人公の強さを基準にした「神話/ロマンス/高次模倣様式/低次模倣様式/アイロニー」の類型化は興味深かった。
これらはあくまでも多くの作品が備える「特徴」を集めてきたもので、さまざまな作品に当てはめることでその妥当性を検証してみることもできる。
また
王朝物語必携による話型に分けた分析も同様に興味深いと思った。
個人的には、後者のようなものをもっと中心にした入門書であってほしかった。