なによりも和田誠によるカバーデザインがいい。単行本と同じデザインだが、文庫本サイズになってもしっくりくる。落ち着いていて、それでいて楽しそうな雰囲気が伝わる。タイトル文字も美しい(背の色は残念。文庫としての統一感を出すためには仕方ないわけだけど)。
で、中味は、前半(3分の1)が「世界文学全集篇」で、後半(3分の2)が「日本文学全集篇」。文学のプロ3人が侃々諤々やりながら、新しい(架空の)全集を編んでいく、そのプロセスを楽しむという趣向の本。
自分の好みの作家がいるとすれば、まず、その作家が取り上げられるかが気になる。それから、その作家にどれくらいのページ数が与えられるか。2分の1巻なのか、1巻なのか、それとも2巻なのか。もちろん、どの作品が取り上げられるかも気になる。読んだことのない作家について2巻が与えられたら、「へー、そんなに価値のある作品なんだ」などと思う。もちろん、「いやー、それはないでしょ」と思うものもある。
三浦「折口(信夫)さんはどうしますか」 丸谷「もちろん一巻」 三浦「『死者の書』も入れますか」 丸谷「入れなきゃいけないだろうな。だけど、僕は『死者の書』はさっぱりわからないんだ」 鹿島「私もわからないんです。どこがいいの? 何度読んでもだめだった」 三浦「『した した した』って、最初の出だしからして、気持ち悪いよね」 鹿島「ああ、よかった。みんなわからないんだ(笑)」
なんていうやりとりが楽しい。
昭和30年代には、文学全集や百科事典のブームがあって、少しゆとりのある家庭の応接間などに置かれていた。実際には一部しか読まないにしても、タイトルを眺めているだけでも作家名や作品名を覚えて、その後に読むということもあっただろう。今はそれがない。これはインターネットでは代替できない。で、日本人は文学からどんどん遠ざかっていく。今さらながら、これはまずいことになっているのではないかなと思う。どうにもならないものなのか・・・。