斎藤氏とは「文脈病」で出会って以来、ほとんどの著作に目を通してきた。しかし、いつごろからだろう、話がワンパターン化しているような気がして、読みたいという気持ちが萎えてきた。今回の著作も購入するかどうか迷ったけれど、半分惰性で買った。で、読んでみたら面白くて、スルスルと最後まで読まされてしまった。著者の新境地だ感じた。この著者ともう少し付き合ってみようかな、と思った。
基本的には、著者の専門である精神医学・精神分析を用いて作品を分析していく内容。作家自身の分析に踏み込む部分もあるが、石原慎太郎論を除けば、かつて蓮實重彦などが対象として設定したような「~的存在」の分析に(ほぼ)踏みとどまっている。その辺は、作者本人をカッコに入れる現代の批評理論を踏襲していて、病跡学とは一線を画している。ただし、大塚英志論や鎌田哲哉論あたりを境目にして、後半に進むほど緊張感が緩んでいるような印象。とくに鎌田論はいただけない。著者自身、この回は原稿落ちを覚悟したというから、かなり苦し紛れではないかと推測する。
ついでに言うと、著者の「ヤンキー文学」への期待は、ちょっと共有しかねる。著者が「ひきこもり系」だから、「自分探し系」が脱出口に見えるのかもしれないと邪推してしまう。