「令」の下の部分は、「マ」ではないのか。
「北」の偏のたて棒は、下に突き通すのかどうか。
子供時代、本の活字が教科書の形と違うことに、
戸惑った人は多いのではないだろうか。
その辺の答えが、本書を通して数十年ぶりにわかった。
簡単に言えば、
印刷用の字と手書きの字にはそれぞれ別の歴史があり、
どちらが正しいわけでもなく、
印刷の字体に合わせて書く必要もない、ということらしい。
さらに、批判の多い「常用漢字」の形が、
実は手書きの歴史をかなり調べて決められたこと。
なのに、「正統な形を守れ」という批判ばかりがクローズアップされ、
一方で小学校では、不要に厳密な指導が行われていること。
などなどの話が、多くの文献や資料による根拠を示しながら進み、
意外な話にも説得力がある。
ところで、著者は漢字学者ではなく、
書道家であり、出版デザイナーである。
そのためか、巷の「あるべき論」的な漢字解説とはひと味違う。
印刷書体を筆運びの観点から分析するくだりや、
「丈」に時々ついている「丶」は何なのかという話は
著者のキャリアならではだし、
「円」という字の意外な昔の姿とか、
「徒」や「従」がなり損なった字形など、
文字のパラレルワールドを見るような興味深い話も入っている。
この本、書道コーナーで見かけることがあるが、
漢字や日本語などのコーナーにも置いて、
多くの人々の目に触れるようにすべきだと思う。