■世界的なグラフィック・デザイナーにして優れた装釘家である杉浦康平先生の新著。本書では、先生が40年にわたり収集して来られたアジアの文字図像の研究成果の一端が披露されている。
■例えば京都の大文字焼きの《大》の字。あるいは美しい江戸時代の小袖(着物)にあしらわれた《春》という漢字や、中国の博物館の扉に木彫りで描かれた《壽(ことぶき)》の文字などなど、様々な時代と場所と形態でアジア各地に見られる文字図像が、美しいカラー写真と的確な解説で展開される。
■とりわけ《壽》の文字が実に数多くの場面で使用されてきたことに改めて驚きを覚える。本書には、祝い物や熨斗につける水引き結びの文字や、台湾の寺の線香、道教の道士の儀礼服、加賀友禅の袱紗に描かれた宝船、茶道の茶菓子、注ぎ口が二つあるモンゴルの注器(やかん)など、22もの事物が紹介されているのである。アジアの人々は、めでたい文字を様々な場所で大切にはぐくんできたのだということがしみじみと実感できるだろう。