小説や詩のような言語芸術においてモダニズム的アプローチを取る場合、それは「書くこと」自体や「文字」「音声」といったマテリアルの方向への自己言及を必ず含むことになる。本書のミソはそれを「写真」によって行ったところにあり、「文字」という概念が「物象化」していく過程をパリの活版印刷工房に取材した作品集である。そして、写真の特性にジャーナリスティックな情報を込めるということがあるとするなら、本書は消えゆく活版印刷の職人世界を記録した写真集でもある。という具合に、何重にも情報が蓄積した、この作家らしいクレバーな作品集だ。