いつのことだったか、TVのある番組で筆を使った年賀状の書き方というのをやっていた。シンプルだけど、書き手の心が伝わるような素敵な年賀状だった。今はパソコンの発達で、カラフルな年賀状が何百枚もあっという間にできてしまう時代だ。毎年来る年賀状もパソコンで打ち出したものばかりだ。子供の年賀状までそうなのだから、もう閉口してしまう。私が子供のころは、数少ないテクニックを駆使して、趣向をこらした年賀状を工夫したものである。かく言う私も、少し時代遅れかもしれないが、今はプリントごっこでお手軽に作っているわけだから、人のことはとやかく言えない。
TV番組で見た年賀状のことが頭の隅っこにいつもあったのだろう。あるカルチャーセンターの講座のひとつとして紹介されていた「はがきで文字遊び」教室が目に飛び込んできた。本書はその講座の講師の著書として掲載されていたものだ。TVのものとは違ったが、自分が捜していたものかも、という思いで買った。意外と簡単にできそうだ、というのが第一印象だ。材料もそれほど高価なものは必要ではなく、まあ、とりあえずは筆と墨とはがきさえあれば楽しめそうである。文字が上手いとか下手とか気にする必要も全然ない。最も主要な材料は、「心」とでも言えようか。少し練習して慣れてくれば、きっと、四季折々のはがきを書く楽しみが増えることだろう。自分の想いを文字に託す。ちょっと、素敵じゃないか。年賀状の受取人が、あまたあるパソコン印刷の年賀状の中に、あなたからの心のこもった筆書きの年賀状を見つけたときの驚きと笑顔を想像するのは、楽しくはないだろうか。忙しい日々を過ごしている人にとっては、ちょっとした心のオアシスとなるような本だと思う。