極論するならば、文化人類学は「他者」を常にその研究対象としてきた。しかし、前書きにおいて本書の内容と目的について編者は、「本書に収録した十五の理論は、ほぼその出現順に配列されている。しかし、この場合も、どの時点をもって当該理論の学としての確立期と措定するかが大きな問題となる。[中略]学説の区分や理論の継承・発展の解釈のうえで、本書ではなお解答の得られていない部分も多い。ただ、モーガン以来の文化人類学理論の流れを、進化論から伝播主義・機能主義をへて広義の構造主義への展開としてみる形でまとめようとしたのが本書の編集上のモチーフであった」(pp.iv-v)と述べている。この意味で、本書は文化人類学そのものを、歴史的研究の対象として捉え直す数少ない試みである、ということも出来るであろう。その一方、入門書として位置づけられたその内容は、門外漢にも分かりやすく平易にまとめられている。また各章末には、当該理論に関する参考文献が提示されており、各々の理論についてより深く知りたい者にとっての水先案内としても大変有用であると感じた。
本書の各章と執筆者は下記の通り(敬称略)。
はじめに(綾部恒雄)、1.文化進化論(黒田信一郎)、2.文化伝播主義(クネヒト・ペトロ)、3.機能主義人類学(田中真砂子)、4.文化様式論(綾部恒雄)、5.オランダ構造主義(宮崎恒二)、6.文化とパーソナリティ論(心理人類学)(箕浦康子)、7.新進化主義(松園万亀雄)、8.マルクス主義と人類学(小野沢正喜)、9.構造主義(吉岡政徳)、10.生態人類学(田中二郎)、11.象徴論(梶原景昭)、12.認識人類学(福井勝義)、13.解釈人類学(小泉潤二)、14.文化記号論(関一敏)、15.現象学と人類学(浜本満)。