本書は、いろいろな意味で大変面白い本です。
ビジネス書としての側面と、教養書としての側面を併せ持ち、その両面から同時に知見と刺激が得られるという、稀有な読書体験を楽しめます。
それを可能にしたのは、著者の広範な知識と考察の深さ、それでいて読みやすい文章によるところでしょう。
食品、電機、クルマ、エンタテインメントなど多彩な分野から実際のブランドやキャンペーンを例に、他の要素や時代との関係を紐解き、一見すると無関係な物事のつながりやその背後にある“文脈”を読み取る展開には、推理小説にも似た興奮を覚えさせられます。
いわゆる近代マーケティングが基調とする、人間の合理的な割り切り方にむしろ割り切れなさを感じる方に大変おすすめです。
実務的な手法については、著者の前著「文脈創造のマーケティング」の方が詳しかったと思いますが、その分、本書は“文化”というもののマーケティングへの導入の仕方についてわかりやすく語っています。
そして著者の論考は日本文化の本来の姿と今後のあり方へと及びます。
個人的には、この本を読んで日本が改めて好きになり、もっと日本のことを知りたくなったことが一番の収穫でした。