何十年も売れ続けている文具のベストセラーを取り上げて、その来歴や思想に迫るという趣向。趣味というほどではないがぼくも文具好きなので、新聞の広告で見かけて手に取った。著者は文具コンサルタントとして著名な人らしい。本書で初めて知った。
取り上げられているのは38社38種の文具。しかし高価な趣味の文具はほとんどない。「ぺんてるのシャーペン芯」とか「キャンパスノート」とか「ヤマト糊」「ポストイット」など、日常の風景に溶け込んでいて、あまり意識しないで使っているものが大半だ。
何十年(ヤマト糊はなんと112年!)もの時代を越えて生き残っている文具は、デザインも機能も総じてシンプルだ。しかもそのデザイン性、機能性をとことん磨きぬいているという印象を受ける。古臭い、という表現はネガティブだが、もっとも古臭いのは人間のカラダそのもので、アウストラロピテクス・アファレンシスから380万年このかた、サイズも使い方もたいして変わっていない。本書で紹介された超ロングセラーの文具も、ヒトのカラダや五感に沿うように工夫されてきたものが多い。カラダに沿う道具は不滅、ということなのだろう。
また、文具が生まれた時代背景もきちんと紐解かれていて、製品に込めた当時の想いが伝わってくる。モノにはモノを作った人たちの想いが宿っている。本書にある種の感動を覚えるのはそこである。モノはやはり、たんなる物体ではない。
筆者愛用の「ラミー2000」と「ロディア」なども掲載されていてうれしかった。セーラー万年筆のプロフィット21とプラチナ万年筆の#3776ギャザードもいつか使ってみたい。