タレント本の類いは、本業+ちょっと手を出してみた感があって
なんとなく毛嫌いしていたのだが、この本はタレント本として
区分けされるのが悔しいぐらいい、いい意味で期待を裏切る本だと思う。
若山牧水、世阿弥、中原中也に志賀直哉などの言葉を時に引用しながら
いつの間にか堺さんワールドに惹き込まれる文章には
堺さんが「ちょっと手を出した」わけではなく
「真剣に」文章に向かい合ったことが伝わってくる。
彼は、立て続けに映画やドラマに出演し、
多忙なスケジュールの中で4年と2ヶ月もの間毎月原稿用紙4枚を
1回も落とすことなく書き上げたのだ、このクオリティで。
私が特に好きな話は「休」という話。
あれだけ多くの役を演じているのだから
(しかも、いつもどこか報われない役が多いと私は思っている)
時々追いつめられたり、苦しくなったりするのではないかと思うのだが
彼は出演が決まり、台本が来るまでの「てもちぶさた」な時間が
一番しあわせな時間なのだという。
堺さんらしいなあ、と思わせてくれるやさしい文章だった。
やっぱり堺さんは、少し不思議な部分のある人で
(「カベムシ」の話や、「シュジュツ」のくだりでもそれを感じる)
物を見る視点が優しくて、厳しくて、真面目で、頭の良い人だと思う。
俳優・堺雅人が好きな人も、堺雅人って誰?って人も、
読んでみてほしい。きっと文人・堺雅人が好きになるから!
さらに言わせてもらえば、ぜひとも買ってほしい!
本書には堺さん直筆の原稿が見れるうれしい仕掛けが施されていますよ。