旧帝国陸海軍も旧内務省も敗戦で解体されて、少しは変わったようだが、しかし、幕藩体制下以来いまに至るも本質的に変わってない「有司専制的日本型官僚制の悪弊」が、こうした問題を扱わせるとモロに露出してしまうことになる。
内務省警保局長が、抑留対象者を「45歳までの男子と限る」と通牒しているのに、おそらくは道府県特高課長(特別高等警察=思想警察)クラスあたりの判断なんだろう、上司の鼻毛を読んだつもりの下っ端役人が独断で拡大解釈し、指示された年齢の上限にかかわりなく、現場裁量で50代、60代の男性たちも勝手に多数抑留してしまうし、抑留所長W巡査部長はというと、「家族や親しい友人を頻繁に抑留所に招き、食事をふるまっていた」という次第。要は、被抑留者たちに供与された配給食料品や家族の差入品を、巡査部長クラスの下僚が横領して飲み食いしていたというわけだ。
これらの事実は、違法な点数稼ぎに出て上司の指示を無視する日本型官僚制に特徴的な「下克上体質(石原莞爾現象?=指示を違えても処罰されないばかりか、しばしば昇進さえ適う)」や、小吏が弱い立場の人間に向け職務権限を濫用する「苛め体質」が典型的に出たものといえる。
本書の指摘するように、じつに表裏の多い日本型官僚制の実態を見せつけられてしまうと、いまになってする「資料がないので解らない」なんて彼らの弁解は、誰しも信用する気持ちが失せてしまうだろう。
大日本帝国とは、このような堕落腐敗の極みともいうべき連中が支配者然とした顔をして国民に臨んでいたというのが真実の姿だった。
これでは、「敗れるべくして戦争に敗れた」というほか、どのような言葉も必要ないだろう。