「リヨンの虐殺者」。ナチス親衛隊の一員であったバルビーは,戦争中,リヨンでレジスタンスの弾圧,ユダヤ人強制収容所への移送等にかかわったことから,こう呼ばれます。フランスの第1帝政期から復古王政期に活躍した,警察大臣ジョセフ・フーシェにつけられたのと同じ名前です。
戦後,バルビーはそのままヨーロッパで活躍します。アメリカ陸軍情報部で反共運動の工作員として暗躍し,時には極左にも接触し,その影響は90年代にまであったとのことです。バルビーは自らは訴追を免れる一方で,フランスにおける戦犯(反レジスタンス)の裁判で証言までします。
しかし,フランスからの引渡しの要求が強くなると,アメリカはバルビーを南米に亡命させ,バルビーは南米で武器密輸やクーデターに関わり,反共の軍事政権を支え,ネオナチの中心になっていきます。
最後に,アメリカが軍事政権を見限らざるを得なくなったときに,バルビーはフランスに送還され,終身刑になります。
バルビーの言葉「皆が皆私を必要としていたのに,裁かれたのは私一人だけだ。そこが不公平だ。」
映画の主人公はクラウス・バルビーですが,そのテーマはバルビーという個人を超え,「敵の敵は味方」という論理でナチスの利用も意に介さなかったアメリカのパワー・ポリティクスだったような気がしました。