経済状況の変化により住まいを変え、つつましい生活をおくるようになる作者。
しかしそこで、悲哀ではなく生活を見直す愉しみを得る。
自分が内側から新しくなっていくような充実感が伝わってくる。
(仕事以外では)生活者としての背骨を持たぬ日々を送っていたが、家を持つ為に無駄を排除した結果、手に入った精神の自由さと人生の礎。
1巻の頼りなく覚束ない足取りを振り返ると、確実に数寄者へ近付いている事に気付いて驚いた。
加えて、家を建てるにつき実現したいと夢想する、個人的原風景の章。
家を建てるという事は、物理的作業と共に人間の内面と向き合う精神的過程の両面で成り立っている事に気付かされる。
この本では、出来事を記す以上に精神的側面や在りようをつぶさに描いているが、そこに重要なテーマの「数寄」が関わってくる所が特別だ。
そしてそれは絵に描いた餅の「数寄」でなく、作者の実感として得た「数寄」を描いている所が素晴らしい。
エッセイコミックは作者の日常を楽しむジャンルであり、創作物ほど作者の美意識が行き届いて無いものと考えていた。
確かに作者の弱々しいヘタレぶりにイラッとした読者もいたようだし、生身の自分を晒されると甘えかかられたように感じてスッキリしない気もする。
だが2巻まで読み進めて、やはりこれは紛れもなく山下和美作品であると感じた。
作者の生活者としてのメンタリティが、平凡な一般人レベルから始まることによって、読者も共にその変化に巻き込まれてゆく。
数寄家を所有するに相応しい姿へと徐々に変わってゆく作者にエールを送りつつ、読者自身の認識も変わってゆく仕立て。
まさしく「柳沢教授」の手法ではないか。
まんまとノセられていた事に気付き、膝を打った。
流石、山下和美!