結城 浩には、品がある。本書でも氏の品がにじみ出ている。
筆者の他の書籍では、
主にプログラミング言語の啓蒙書らで知っていたが、
それら書籍でも、誠実にひとつひとつ丁寧に内容を噛んで含めるように、
そして諭すようにちょっとずつ解説していく様子が非常に好感が持てた。
そうして、読者を決して置いてけぼりにしない。
わかりやすいが、内容自体は、決して簡単ではない。
そうした態度が本書でも貫かれている。
本書を読む前と後とでは、数式に態度がめっきり変わっている自分に気づく。
「数式」を前に、
わからない、なんだか難しそう、という、先入観で捉える前に、
ひとつひとつ実直に、まずは、数式を読んでみよう、と思える。
正直、主人公と女生徒とのやり取りの「萌え」部分については、
免疫が無いせいか、かなり面食らって、「(このやりとりは)果たして必要か」
という気にもなったが、
本書を読み進める上で、スパイス、というか甘みとなっているのは確かだろう。
(この甘味がなければ、より無味乾燥であったかもしれない。
そういう意味で、本書にはふさわしい味付けだったろう。
筆者の品の良さがあるので、読めないほどの甘ったるさでもない。)
本書を誰に勧めるか、という問いがあったとすれば、
中学生、高校生、あるいは、数学嫌いの社会人、と
幅広い層が思い浮かぶ。
一見中高生向けとも言える外観ながら、読んでみると読者の層を限定しない、
けれど「教育」書として極めて秀逸の作品といえると思う。
(念のため言うと、読み物としても、当然十分なクオリティがある。)
ひっくるめて言うと、本書は、
安易ではない、非常に誠実な態度で書かれた文書であり、
誰にとっても読む価値が多い書だと思う。