ゲーデルの不完全性定理ほど誤解のはびこっている定理もそうはないだろう。
「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用や
アナロジーの罠―フランス現代思想批判でも「理性の限界」「数学の限界」などと吹聴したがる哲学者・思想家によるゲーデルの誤用が批判されていたが、数学の啓蒙書でさえ、内容の誤ったものは多い。
その中で、本書は数少ない内容がきちんとしている、そしてそれでいて素人が読んでも分かりやすい、という奇跡的な仕上がりになっている。
話は、集合論やεーδ、弧度法など不完全性定理に直結しない内容も多く、構文論・意味論の区別など基本的考えを導入しておいた後で、最後の章で一気にゲーデルの第一不完全性定理を導いている。
対話形式なので、「間違えやすいポイント」を誤例とともにきちんと押さえることが出来る、というのが、本書の形式のいい点だと思う。
分厚いが、内容は不完全性定理ではないことも多く、不完全性定理関連はかなり絞られていることには注意してほしい。
例えば完全性定理は本書では全く取り上げられていない。なので、完全性定理の「完全」の定義と不完全性定理の「完全」の定義が異なっている(同じ「完全」だが複数の意味があるのだ!)ということも書かれていない(当然「健全」の定義もない)。
だが、「不完全性定理」の「完全」の説明は完璧に書かれているので安心してほしい。
ある程度、論理パズルとかをやったことのある人なら「きちんと読めばわかる」ようになっている。
そうした一般人でもわかる不完全性定理の本は恐らく本邦初かもしれない。