本書は巷でよく見られるような「物理や工学における道具としての数学」や「数学を学ぶと論理的思考力が身につく」と言ったレベルの内容でありません。現実世界に一見役に立たなさそうに見える、大学の数学科で習うレベルの非常に抽象的な現代数学が、人間の考え方、生き方、世界の在り方にまでどのように役に立っているのかを、難しい数式は使わずに説明します。
訳者の言葉を借りると、数学全体を貫く一般化、抽象化、公理体系といった基本的な概念がどのようなものでなぜ必要なのかを自ずから浮かび上がらせるだけでなく、数学的な考え方や概念は理性的な思考体系の一つの手本であり、それを身に付け個人や社会に正しく用いれば、より良い人生を送ることができ社会をより良いものにできると著者は説いています。
本書では数学から数々の教訓を示しています。「民主主義」「高慢と偏見」など一見、数学とは関係ないと思えるキーワードまで数学の考えと結びつけているところは感嘆します。
中学〜高校レベルの数学の学力があれば理解できる内容だとは思います。大人はもちろんぜひ中高生に読んでもらって、もっと数学が好きな学生が増えてくれたらと思います。