FBI捜査官の兄に助力する天才数学者が様々な数学を駆使して犯罪を解決するドラマの
スピンオフ的な解説本ながら、ドラマで扱われたものが基本的に実際そのとおりである
ことを解説しています。
犯罪捜査やテロ対策から交通安全や治安維持といった社会政策にまで、あちこちで
実際に高度な数学が駆使され私たちの日常を維持している様は、うっすら「そうかな」
と思わないではなかったものの、やはり圧巻。
紹介される数学も、グラフ理論によるネットワーク分析などゴリゴリの理論から、
画像エンハンスといった高度な応用にいたるまで非常に多岐にわたっています。
数学の説明は、実はほとんどなく、その現実の応用場面を読者に理解してもらうのに
最低限必要な範囲に止められていて、数学のお勉強にはなりません。
でも、もっと大きな主張が隠れているのではないかと疑い中。
ドラマでは、犯罪は弟の天才数学者が駆使する数学だけでは解決しません(いや本書の
力点は、数学を駆使するところにこそあるわけですが)。駆使される当の数式を計算する
ために必要不可欠な変数は、地道なFBI捜査官の足や他の捜査機関に蓄積されていた
過去の履歴から得られます。あるいは、数学の指し示す範囲を限定するための追加的な
情報や数式から有意な解を導出するために挿入される決定的な定数は、FBI捜査官の非
数学的(かどうか微妙ながら)な専門知からもたらされます。
数学が様々な場面で実務に応用されて、すばらしい威力を発揮している、というのがこの
本の眼目であり主たる内容でありますが、読了して印象に残っているのは、その伏流として
の、数学的ならざる専門知や、現場の当事者の前向きさといった、いかにも従来的な努力・
営為と十分にタッグを組んでこそ、数学の威力が現実で活きる、ということだったりします。