2006年に入って松浦寿輝のエッセイ、評論、書評の単行本が立て続けに出ているが、本書はそんな中の一冊。僕は著者の小説のファンなんだけど、どうも著者自身が強く表に出てきてしまうエッセイという形式は、小説に比べて魅力を感じない。自制がないと言うかユルいというか、小説という形式に凝縮していく際のストイックさがスコンと抜けているのだ。ネクタイとか万年筆とかノートとかそういったマテリアルへの思いを直接的に語る時、小説では制御されていたペダントリーが表出する。それは余剰なものではないか。本音なのか冗談なのかわからないけど、ほんとうにこれが松浦寿輝?っていう陳腐で凡庸な感受性にも肩透かしを喰う。「居酒屋」より「ビアホール」とか、40歳過ぎてから煙草を吸い始めたとか、ところどころ素敵なセンスも垣間見られるのだけど。バイクの話とか“インテリの中年デビュー”のようで、なんでそんなことあえて語るのだ?という失望感がある。僕にとっては、早く小説が読みたい、そんな思いにさせるエッセイ集だった。