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教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)
 
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教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書) [新書]

竹内 洋
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (25件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

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   本書のタイトルを目にして戸惑いを覚える向きも、決して少なくはないだろう。教養主義などと呼ばれる姿勢は、まさに「没落」して久しい。なにを今さら、と感じても当然だし、そもそも教養主義なることばを知らない読者もあまたいるはずだ。少々古めかしい本と思われても止むを得ないかもしれない。ところが、こうした印象とは裏腹に、本書はきわめてユニークで刺激的な文化論となっているのである。

   教養主義とは、読書を通じて得た知識で、人格を磨いたり社会を改善していこうとする人生観のこと。大正期の旧制高校ではぐくまれた思潮で、戦後も1970年前後までは大学生の規範文化だった。本書はさまざまな文献や統計を素材に、教養主義の盛衰を実証していく。たとえば、勉強時間や書籍費、スポーツへの関心などについて教養主義の担い手たる帝大文学部生と他学部の学生を比較したり、学生の検挙率からマルクス主義の浸透を解読、または、大学生への読書調査をもとに、戦後、「世界」「中央公論」といった総合雑誌が読まれなくなっていくさまを提示する、といった具合である。こうした検証だけでも充分おもしろいが、「いったい教養主義とはなんだったのか」という考察にまで筆が及んでいるところが、なにより注目に値する。

   著者によれば、教養主義を支えたのは、都市の気風よりも、むしろ農民的刻苦勉励の精神である。これも単なる印象ではなく、帝大文学部の学生は他学部にくらべて農村出身者の割合が高かったという。知識人として文化的生活を送ることへの憧れが背後にあったと考えられるのだ。ゆえに戦後、都市と農村の文化格差が消失し、学生がエリートでなくなったとき、教養も意味を失ったとする。さらに本書では、大学生の権威が失墜した不安や怒りを源泉に学園紛争が起こったという見方を示しているが、これもさまざまな資料にもとづき教養主義の斜陽が述べられたあとだけに、はっとするほどの説得力を持っている。

   とはいえ、本書は単に実証的・論説的な書物ではない。あからさまに謳(うた)うことは避けていても、教養主義に対する愛惜が端々ににじみ出ており、それが骨太なメッセージとなって伝わってくるのだ。著者も述べているように、今後かつてのような教養主義が復活することはまずありえないだろう。しかし、文化がますます軽く、歯ごたえのない消費財となっていく時代、そのなかにいささか学ぶべきものがあると考えても決して的はずれではあるまい。(大滝浩太郎)

内容(「BOOK」データベースより)

一九七〇年前後まで、教養主義はキャンパスの規範文化であった。それは、そのまま社会人になったあとまで、常識としてゆきわたっていた。人格形成や社会改良のための読書による教養主義は、なぜ学生たちを魅了したのだろうか。本書は、大正時代の旧制高校を発祥地として、その後の半世紀間、日本の大学に君臨した教養主義と教養主義者の輝ける実態と、その後の没落過程に光を当てる試みである。

登録情報

  • 新書: 278ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2003/07)
  • ISBN-10: 4121017048
  • ISBN-13: 978-4121017048
  • 発売日: 2003/07
  • 商品の寸法: 17.2 x 11 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (25件のカスタマーレビュー)
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形式:新書
 「教養主義」の定義は、「哲学・歴史・文学など人文学の読書を中心にした人格の完成を目指す態度」(40頁)とされている。しかしこの教養主義は、大正から戦後に至るまで、何度も内部分裂や質的変貌を経てきたのである。「万巻の書物の前にひざまずく」ことを要求した大正教養主義の象徴的暴力、そうした象徴的暴力を逆手にとって優劣関係の転覆を可能にした「教養主義の鬼子」としてのマルクス主義、マルクス主義をかいくぐることでより社会に開かれた昭和教養主義、戦後、新中間層(ホワイトカラー)の拡大に伴って広がった大衆的教養主義。しかしながら、これらの間には「教養主義」として一つに括ることのできる確かな共通性が存在した。それは日本に特有の「刻苦勉励的・農村的エートス」と「西欧斡?化志向」であった。

 著者は現代における「大衆平均人(サラリーマン型人間像)文化と適応の文化(実用主義)の蔓延」(242頁)を嘆く。現代の資格に対する過剰な情熱は、たとえそれがどれほど取得困難な資格で、たとえ人がどれほど努力をしようとも、それはあくまで「適応」であって、教養における三つの作用(「適応」「超越」「自省」)のひとつにすぎない。そこで著者は、現代における教養主義の機能について再考してみる必要性を説くのである。

 「旧制高校的教養主義をいまさらよみがえらせることは時代錯誤ではある。しかし、教養の意味や機能ということになると、旧制高校的教養主義から掬いあげるべきこともある、とわたしはおもう。」(242頁)

 全くその通りだと思う。教養とは「役に立たない??学知識」ではなく、分野の壁を越えるための理想主義の役割(「超越」)、そしてその理想主義さえも相対化し自己の正統性に疑問を投げかけさせる役割(「自省」)を担うものでなくてはならない。このことの意義は現代でも変わりはないと思う。

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78 人中、68人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書
(主に「役に立たない」人文書の)読書経験を人格形成の糧とすべきという「教養主義」。著者はこのような「教養主義」が何故社会的に盛り上がり、そして没落していったかを検証する。
竹内氏については以前執筆した『学歴貴族の栄光と挫折』(こちらも面白い)以来、個人的に注目していたが、本書も期待を裏切らない面白さだ。

アカデミズムとジャーナリズムをつなぐ「岩波アカデミズム」の果たした機能。『太陽の季節』は、成り上がり新興ブルジョワ出身の石原慎太郎が、武士的・農村的な勤勉性を旨とする教養主義の「ダサい」メンタリティにつきつけた、裏返しコンプレックスの「NO!」であったこと。学生運動世代が、丸山真男的な旧来型教養主義を相対化した吉本“大衆の原像”隆明を支持した理由!。吉本をさらに相対化する「道化」としてのビートたけし。著者は本書で、「教養主義」をキーワードに、二十世紀日本思想史を鮮やかに紡いでみせる。

前尾繁三郎(政治家)や木川田一隆(東京電力会長)のような、「教養」ある非凡な実務家に共感を寄せている(p243)ことなどから、著者が教養主義に深い愛着をもっていることは確かだろう(何より、著者自身が浩瀚な書籍を渉猟する博識な「教養主義者」であることは、文中の引用文献や巻末の参考文献表の膨大さ・多様性からも明らかである)。

ところで、著者は大学のレジャーランド化の背景には、大卒が「ただのサラリーマン」として処遇されるようになったために、そのサラリーマンの文化に適応するため、大学生が教養主義を無視しだしたことにあるという。??すれば、昨今の大学生のマジメなお勉強ぶり(資格重視・成績重視)は、このサラリーマン文化すらリストラ等により崩壊し始めたことを、やはり示すのか?

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36 人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 仮面ライター VINE™ メンバー
形式:新書
  
 或るHPにおいて、元参議院議員で政治評論家の平野貞夫氏が衆院事務局に勤務していた頃、大正から昭和の初め一高、東大で教育を受け官僚から戦後に政治家となった前尾繁三郎、椎名悦三郎、福田赳夫といった人物から、「自分達は官僚として、政治家として権力を握り、それなりに日本資本主義の発展に尽くし贅沢と栄誉を体験したが、思想信条に生き、貧しい人たちのために一生を尽くした人たちの方が人間として立派だ」という一種の左翼コンプレックス的な話をよく聞かされ、感動した、と述べている箇所がある。「それは一高、東大の同級同窓生で左翼運動に生涯を賭けた友人」に対するごく普通の感性でもあったらしい(「日本国漂流」から引用)。そして、この月旦評はまた、東大を頂点とする官学アカデミズムの現状に対する痛烈な批判も込められている。

 本書は、「日本型教養主義(者)」の軌跡を考覈したユニークな新書であるが、教養主義との関連で前出の前尾繁三郎氏(1905〜1981)の人格にも触れている。つまり、氏について、その「教養の深さが総理の座を遠いもの」にしたけれども、氏にとって「教養とは『ひけらかす』(差異化)ものではないのはもちろん、必ずしも『得をする』(立身出世)もの」でもなく、「自分と戦い、ときには周囲に煙たがられ、自分の存在を危うくする、『じゃまをする』もの」であった、とする。しかし、著者の竹内洋・京大教授は、「ここに教養の意味の核心部分がある」と推究し(PP.242~245)、「教養主義が敗北・終焉し、同時に教養の輪郭が失われているが、そうであればこそ、いまこそ、教養とはなにかをことのはじめから考えるチャンスがやってきたのだともいえる」と勘決するのだ(P.245)。
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