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教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)
 
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教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書) [新書]

本田 由紀
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

一九九〇年代に、若者の仕事は大きく変貌した。非正規社員の増加、不安定な雇用、劣悪な賃金…。なぜ若年労働者ばかりが、過酷な就労環境に甘んじなければならないのか。それは、戦後日本において「教育の職業的意義」が軽視され、学校で職業能力を形成する機会が失われてきたことと密接な関係がある。本書では、教育学、社会学、運動論のさまざまな議論を整理しながら、“適応”と“抵抗”の両面を備えた「教育の職業的意義」をさぐっていく。「柔軟な専門性」という原理によって、遮断された教育と社会とにもういちど架橋し、教育という一隅から日本社会の再編に取り組む。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

本田 由紀
1964年徳島市生まれ。社会学者。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学(教育学博士)。現在、東京大学大学院教育学研究科教授。著書に『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版、第6回大佛次郎論壇賞奨励賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 新書: 224ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2009/12)
  • ISBN-10: 4480065237
  • ISBN-13: 978-4480065230
  • 発売日: 2009/12
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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形式:新書
本書は、タイトルにある通り、主に学校教育における職業教育の意義を主張するものです。

高校や大学での教育の内容に関しては、従来、何かに特化した教育よりも、普通教育や一般教養が重視されてきました。
人間が持つ多様な可能性を開花させるものとしての教育を重視し理想としてきたのであり、職業教育など、専門的・
個別的な教育を行うことは、学校教育段階では、子どもの可能性を狭めてしまう、と考えられてきたのです。

これに対して、本書では、過去の日本が経験したような高度経済成長が望めない現代にあっては、雇用情勢が厳しく、
現に多くの非正規雇用などが増えてきており、しかも、このような現状を、過去の「日本的雇用」を復活することで
解決することは、もはや不可能である、との認識をもとに、学校教育を離れた若者がその後の職業生活において悲惨
な状況に陥らない(将来に希望を持てる社会を実現する)ための一つの方策として、高校以降の学校教育段階でも、
ある程度の職業教育を取り入れるべきだと主張しています。

特に興味深かったのは、職業的教育を取り入れることが、単に将来の職業人生を豊かにするだけでなく、人間と社会との
関係をも視野に置いているという点です。アメリカの社会学者リチャード・セネットの議論――職業的専門性を身につけ
ることは、仕事の内容に対するコミットメントという価値観を育むものであり、こうしたコミットメントは、あらゆる可
能性の中から自分で自由に自己責任の下に選択・追求することが求められる社会にあって、むしろ人々と社会の結びつき
を強めるものである――を紹介し、評価しています(173頁以下)。

他の箇所でも、一般的・抽象的で柔軟性の高い能力を育てようとする教育は、内容が無限定であるがゆえに、具体的に
必要とされる教育内容・方法を全く示すことができないし、また、子どもに対しても、どのようにして生きてゆけばい
いのかという切実な問題に対して何らの手がかりを与えることができない、と論じている(192頁以下)。

本書の主張は、急激な経済成長が望めない状況に直面した日本社会において、教育に期待できる一つの解決策の方向性を
指摘している点で、非常に興味深く、有意義だと思います。

他方で、当然予想される反論として、職業教育を取り入れることが本当に人間の可能性を狭めることにならないのか、特に、
普通教育を重視することの意義と問題点は何なのか、という点についての記述が少なかったのが残念です。また、職業教育
を重視する学校と、大学進学を見据えた(ある意味エリート養成を担う?)普通教育を重視する学校との関係のあり方など、
学校教育制度の全体像をどのように考えるのか、についても、本書は言及していません。

それでも、教育をどこか神聖なもの(子どもの成長を保障するものだ、社会状況に流されるべきではない)と捉えがちな傾向
に対する強烈な反論として、本書は重要であると思います。おすすめです。
このレビューは参考になりましたか?
32 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By いせむし トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:新書
本田由紀の新著は、
職業教育に関するものだった。
本田先生も自ら書いている通り、
自分の専門を越えて問題提起に挑んだチャレンジングな著作だと思う。

冒頭の「あらかじめの反論」がリアルで、
教育関係者、産業界、そして一般社会の職業教育への音痴ぶりをさらけ出してくれる。
短い章だが、ここは読みどころだと思う。

大まかにまとめると、
前半部分は学校制度の成り立ちから、職業教育についてに変遷を概観している。
就職に偏った(しかも粗末な)現在の「キャリア教育」(主に高校大学)を分析していて、
たいへん参考になった。

私はこれを大学で行われている現在のキャリア教育への反論として読んだ。
耳の痛いことが書かれているが、正論だ。

中盤に登場する、「家庭→学校→産業界」のトライアングルも説得力があった。
正社員と非正規社員の(結果的な)関係性についても目から鱗が落ちた。
もはや終身雇用は日本社会では成立しておらず、
その対処法として教育における職業的意義が重要になるという指摘が重要である。
こういう構造的な分析をしているところが他のキャリア教育本と異なる点だ。

後半は解決策に関する考察が中心。
解決策は別途考えられる必要があると思うが、
貧困問題の解決策のひとつとして、
職業教育の今後は戦略的に考えられる大事なテーマだと思った。
このレビューは参考になりましたか?
9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ママモステ トップ1000レビュアー
形式:新書
「あらかじめ反論」が現実的で参考になります。すでに賛否両論出た感のある問題なことをふまえて発言していらっしゃるのがわかります。
当方は、米国の高等教育機関で仕事をしていて、かつ日本以外の他国でも教育を受けた経験のあるものです(オセアニア、ヨーロッパ)ので、こういった日本の教育を論じた書物がえてして「アメリカはこうしている」とか「ヨーロッパはこうだ」、と、安易に走るのに疑問を感じてきました。この本は、あくまでデータ、論理的思考、からのアプローチで好感、信頼が持てます。

著者の論じている教育の達成目標は、「そうぞうりょく」の養成かと思います。「創造」の、「ないというなかからものを見つけ出す、ないといわれるなかから何かを作り出す」ということと、「想像」の、「本当に無いのだろうか」、「このままないということになるなら1年先、5年先どうなるのか、今、どうしたらいいのか」と考えて、何かに繋げる力を養う事です。そして、ひいてはそういったアプローチを取る若者、革新者を煙たがるのではなくむしろ奨励する社会、助けられるコミュニティを作っていく事だと思います。

これは、日々、教育実践の場だけでなく、子供教育、部下教育、同僚や友人との企画ミーティングなど、様々な場所で考えられる問題かと思います。そして、私の経験上で話すと、こういった経緯で発見され、実現したものというのは、一概に「みんなの役に立つ」ものが多いと感じます。
廉価でコンパクトな本ですし、一読をお勧めいたします。
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