酒と食事と鎖骨のきれいなイケメンを愛する、天上天下唯我独尊の女。それが、今作の主人公クロアである。
隣国との紛争は耐えないし、政治を納める者は腐っている。
そんな鬱屈した世界に生きながら、「それがどうした?」と言わんばかりに
ふてぶてしい笑みを浮かべ、権力者たちの思惑に振り回されることなくそれを踏み越える。
問答無用のバイタリティで自分の人生を自由に謳歌する無敵の主人公になるであろう美女。
いつの時代の読者相手でも人気者になれる(現実世界が低迷していればしているほど?)
よく言えば普遍的であり、悪く言えばよくあるタイプの主人公像です。
僕には、はっきりいって「またか」と食傷気味でうんざりする気持ちが多々あります。
同じような思いの方も結構いるのではないでしょうか。
しかしこの作品のタイトルは『「教壇」のクロア』。
物語は、教師クロアの立つべき教室も、教えるべき生徒も、
彼女の教え子であった卒業生の手によって滅茶苦茶にされる、
という奇抜な展開で幕をあける。
「『教壇』はどうなった?」と最初は思わずツッコミたくなりましたが、
それでも、彼女は「先生」だし、立っているのは「教壇」なのです。
『安心しろ お前らはいずれ自分の道を見つける そのために私がいるんだからな!』
自由奔放な生き方をするまでは、よくある主人公像。
だけれど、彼女は自分の後の世代の子供達を導く役割に立ち、
クロア自身も彼らに対しての強い責任感と深い愛情を確かに持っています。
(どこまで本気か分からないけれど)。
そこがよくある俺様ものと一味ちがうところ。
そして、恐らく彼女の自由な生き方に一番影響を受けていると思われる、卒業生ロシャの存在。
『私にとって国という概念に意味はありません。価値があるのは自分という領土のみです』
と宣言する彼は、自らの能力を売って隣国に亡命し、クロアと敵対する関係になります。
彼女と同じように自由な生き方を実践する者であり、また一方で、
「自分の次の世代についての意識がない」、「自分だけで精一杯」という
未熟者である点で、クロアとは大きく違います。あくまで現段階での話ですが。
その違いを通して、『何が正しくて、何のために生きていくのか解らない、そんな鬱屈した時代の中でたくましく生きる、本当に自由な精神とはなにか』
という問いかけと、それに対する一つの答えを、クロア先生は、読者(ことに10代〜30代の青年層)に提示してくれるのではないかな、と僕は勝手に期待しています。
ただ読者の傷ついた自意識を回復するためだけに消費される、なんちゃって個人主義漫画にはならないでほしいものです。
ま、そんな小難しい話は置いて置いても、井上先生の萌えるというよりは惚れる人物設計と、かのえ先生のかわいい絵柄で描かれる女の子たちのコメディパートは、読んでて単純に面白いので、是非一読してみることをお勧めします。