新卒入社、永い企業生活、そしていつかは片道切符出向そして転籍、準定年、或いはその前にも割増金付き早期退職、それともしっかり勤め上げご苦労様定年退職、いずれにしても一区切りつけた次にある永い永い時間、これをどう生きるか。それまでの生き方と同じ延長線上はない。人それぞれの喜怒哀楽、人生模様について、我々と同じ会社人間の第二の人生の姿が描かれ、読者をほんのり暖かい気分にしてくれる良い作品である。
「商社勤務の彦坂」は、営業から監査部に異動となり不祥事の調査等を行なう早大卒の58歳。「食品問屋を定年の河合」は、趣味が広く、序列や肩書きを趣味に持ち込むことを嫌悪する63歳。「銀行出身の雨宮」は、東大卒だが銀行合併で思わぬ挫折を味わい、退職後はアルコール依存の毎日の61歳。同じコミュニティに住む仲良し3人組、それぞれの人生観や日々の生活が展開されていく。我々のごく身近な風景に、淡々とした筆致ながら物語りにどんどん吸い込まれていく。「彦坂」は看護師芳江と知り合い、「河合」は海外20ヵ所寄航船旅で隆子と知り合い、「雨宮」はファミレスの典子と知り合い、それぞれの妻達とは違う女性との新鮮な交流がなかなかいい。彼らの60歳前後からの永い人生を見ていると、誰でもいつか来る人生の折り返しをどういう形でどう自分を変えていくか、それを同時に考えさせてくれる。不思議とこれからの自分の人生がこの3人と絡んでくるような気がしてくる。