会田雄次はビルマで捕虜になり、英軍捕虜を虐待した日本人戦犯に対する英国軍人の陰湿、残酷な報復をまのあたりにしました。敗者の屈辱を経験した著者にとって、戦後の荒廃から復興し、平和さえ唱えれば安全と信ずる社会、競争をおそれ万事横並びをもってよしとする社会は坐視するに忍びなかったに違いない。本書は平和ボケへの警鐘として書かれました。
著者によれば、西欧のルネッサンス期は文芸興隆と同時に、内乱、戦争に明け暮れた苛酷な世界でした。その点、わが国の戦国時代とよく似ている。本書は、闘争の宿命を負う者として宿敵としての親子兄弟(斎藤道三、義竜)、覇者の子(織田信雄・信孝)について考察、次いで闘争世界の敗者として、一匹狼に徹しなかった者(イル・モーロ、斎藤道三)、最後の賭をためらう者(サヴォナローラ)、覇者の出自にこだわる者(佐々成政、滝川一益)、武勲をたてすぎた者(ヴァレンシュタイン)等々を取り上げ、闘争世界における敗者の条件を縦横に論じました。その冷徹な史観と鋭利な筆鋒はまさしく一読の価値があります。