インタビューを中心にして構成されたノンフィクションとしては出色の出来だと思う。
こうしたかたちの記録はインタビュイーが有名人である場合は良く取られる手法で、これまでもクリストファー・ シルヴェスター『インタビューズ』のような過去の著名人のインタビューを集めたもの、自伝と銘打っていてもインタビューで構成された記録などあるわけだが、『救児の人々』でインタビューされる人たち=インタビュイーは、新生児科に勤務する医療職員であったり、極小未熟児の親になってしまった普通の人々であって、決して多くを語る人たちではない。
それだけに心の底から、あるいは日常的に自らに問いかけている重い問いがズシンと心に響く。
あとがきで著者は、次のようなエピソードを紹介している。
本が書けないスランプに陥った著者が、インタビューとパーソナル・サポートをを続けていた女性に本が書けなくて苦しいという話をした。すると彼女が「私はこうやってずぅっと話を聞いてもらえてなかったら、子どもと心中していたかもしれないよ。そういう人間同士の関わりとかって本にできないの。熊田さんが伝えたいのって、そういう人の心に訴えるものでしょ。その関わりのなかでしか、訴えられるものって出てこないんじゃないの。ただのICUやお産の説明本ならいらないし、そんな情報ならネットで十分だわ」と話してくれ、そのことで「ご家族や医療者の声をただそのまま載せていく踏ん切りがついた」と。
「聞き手」としての彼女の実感だと思う。もしかすると、素晴らしいジャーナリストの誕生する過程を目にしているのかもしれない。今後が楽しみである。