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故国喪失についての省察〈1〉
 
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故国喪失についての省察〈1〉 [単行本]

エドワード・W. サイード , Edward W. Said , 大橋 洋一 , 和田 唯 , 近藤 弘幸 , 三原 芳秋
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

〈文学の研究は抽象的なものではないし、また否応なく有無を言わせぬかたちで、文化の領域に、それもその歴史的状況がわたしたちの発言や行動に大きく影響する、そんな文化の領域に位置づけられる。わたしはずっと「歴史的経験」というフレーズを使ってきた。なぜならこのフレーズは術語でもなければ隠語でもなく、形式的かつ専門的世界から離れて、生きられたものへと、争われたものへと、直接的なものへとわたしが本書のエッセイのなかで、なんども立ち返るものへとそうしたものへと開かれた道筋を示唆しているからである。けれどもまたわたしは、誰にもまして、空虚な人文主義のもつ危険性が現実的なものであることを知っている〉(序文より)
本書はサイードの35年にわたる批評実践の集大成とも言うべき評論集である(全2冊)。本書1が収録するのは前半期の評論群。最初期の作品はメルロ=ポンティ論である。英文学の助教授としてキャリアを歩み始めたサイードがなぜメルロ=ポンティなのか。それに続くT・E・ロレンス、コンラッドとニーチェ、ヴィーコ、フーコー、オーウェル、ヘミングウェイ、グレン・グールド、ブラックマーらを扱った評論で、サイードは何を問題にしているのか。表題となり、全体を低通している「故国喪失」と批評実践の結びつきとは何か。
どの評論からも聞こえてくる、ゆるぎない一貫性をもったサイードの声を耳にするとき、真の批評実践とは何かという問いへの、ひとつの答えをそこに見出すだろう。完成品としての主著群からはむしろはっきりとは見えにくい、サイード批評のエッセンスにじかに触れているような手ごたえを堪能したい。

内容(「BOOK」データベースより)

35年にわたる批評実践の集大成としての評論集。メルロ=ポンティからグレン・グールドまでを論じた17編を収録。故国喪失と批評のかかわりを軸に、サイード思想のエッセンスを伝える。

登録情報

  • 単行本: 353ページ
  • 出版社: みすず書房 (2006/04)
  • ISBN-10: 4622072033
  • ISBN-13: 978-4622072034
  • 発売日: 2006/04
  • 商品の寸法: 21.2 x 16 x 2.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 374,290位 (本のベストセラーを見る)
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形式:単行本|Amazonが確認した購入
 語るべき著作への思いと距離のとり方において類まれな美しさと説得力をもつメルロ・ポンティ論「受肉の迷宮」、その冒頭でサイードが要約してみせた直接的経験の復権こそは、はからずしもこの本の通奏低音をさし示しているのだと思うけれども、その経験の重視とは、サイードにとっては自らの故国喪失の経験において他になく「奇妙な魅力に充ちているが経験すれば地獄になる」事態に他ならないのだろう。マラルメを引き合いにだし自己の経験を、あるいは人生をひたすら遠くに押しやり、何かが書かれているが何も意味しないテキストを目指す文学的モダニズムのある傾向について、おそらく「帝国」の存在と活動が引き金になっているのであろう二十世紀における人々の大量移動は、それらモダニズムとははっきり違ったアポリアを、記録し表現する者たちに課したのだとサイードは確信している。直接的・歴史的経験の復権は、そのまま「受肉の迷宮」にさまようあやうさを引き受けざるを得ないのだが、その扉はコンラッドによって最初に開かれ、そして今、もっとも才能ある作家たちによって大きく開かれようとしている、とサイードは言う。
 それら悪戦苦闘する作家たちの一人、V. S. ナイポールについての一章は、多くのナイポール批判の文章の水準を大きく越えるものではない。つまり、彼の最初のイスラム紀行について、イスラム世界についての基本的知識の欠如・誤認、偏見とも言えるナイポールの固定観念を批判・検討するが、それは誰にも反論の余地のあまりない事実だろう。しかし、ナイポールの著作の魅力を充分に説明するには到っておらず、サイードともあろう明哲の人がそれに気付いていないはずもなく、とすれば立場が先行した政治的テキストという印象が免れがたい。サイードの政治性がどうしても気になるのであり、それについてルカーチ論「偶然性と決定論のはざま」を今一度読み返したい、と思っている。
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