この本を読むときには、法学者シュミットとナチスとの関係を、まずは忘れて、虚心坦懐に読んで欲しい。
あくまでも、自分の頭の中にある、この政治的価値を忘れ、価値中立になろう。
その上で、この本に描かれている、政治の本質……政治的関係とは「友敵関係」であり、政治とは闘争的なものであるということを改めて噛みしめて欲しい。
良く我々は、政治や行政に中立であることを求める。
しかし、本来、政治とは何であるか。
人々は、何らかの社会的な欲求を持っている…例えば、住環境を良くしたい、自分の属する企業と業界の利益を拡張したい、社会的弱者を助けたいなど。
言い換えればこれらは自分たちが実現したいという価値だ。
ところが、自分たちの実現したい価値をそれぞれ追求するところ、社会的な摩擦や対立が生まれる。
政治というのは、一定のシステムの中で、権威と権力を持って、価値の優先順位を着け、その価値の実現のために社会的なリソース(例えば税金=予算など)を配分する行為である。
このシステムは当然、価値中立であるはずがない。システムの中で力を持ったものが、自らの価値を優先的に実現しようとする。
それゆえに、政治も闘争的なものとなる。誰だって、自分の実現したい欲求を優先させたい。
だから他人を抑え込み、排除してでも、権力や権威を手にし、あるいは権力や権威におもね、それらを追求していく。
この本質は、デモクラシーであっても、独裁制であっても、自由主義であっても、社会主義であっても変わりはしない。
例え、民主主義であっても、警察をはじめとする物理的強制力(暴力)なくしては機能しえない。
権力・権威の執行がより暴力的なものか、より理性的なものかの違いに過ぎないのであって、
シュミットが看破しているごとくに政治とはことごとく闘争的な過程なのである。
自分たちの価値を優先しないものは必然的に敵となり、自分たちの価値を優先しようというものは必然的に味方となる。
本書は、この闘争的なプロセスである政治というものの本質を暴いた先駆的な著作であり、
現代人が教養として読んでおくべき一書なのだ。
だから、まず本書から「シュミットはナチのご用学者」という見えないレッテルを剥がせ。
読むのはそれからだ。