政治家の回顧録としてはあまりにも中身が薄い。
しかしながら,思いのたけを飾り気なく語っているところは,やはり師の三木元首相譲りか。
失礼ながら,今まで海部さんに対しては,「時の権力にコロコロ寝返る節操のない政治家」という良くない印象を抱いていたが,竹下派の傀儡であることを百も承知で,それでも国家と自民党のために恥を忍んで総理になり,世界の激動期に政権を任された孤独と苦悩が率直に書かれており,この人を再評価することができた。
小沢さんには何度も煮え湯を飲まされて,さぞや悔しい思いをしたのだろう。海部さんの小沢評は非常に的を得たものであり,その小沢さんが,でんと真ん中に座っている民主党政権が続く限り,政界の浄化は期待できそうにない。
ひょっとすると,もっともっと言いたいこと,国民に伝えたいことがあったのではないか。しかし,他人を批判するだけでは一国の総理だった者として恥ずかしい,そんな思いが200ページにも満たぬ小さな回顧録となったのではないだろうか。
ともあれ,海部俊樹という一人の政治家を見つめ直すことができた。
海部さん,長い間,お疲れ様でした。