第1部の「経済理論から政策を考える」が興味深い内容でした。第2部も興味深い内容ですが比較的常識的な内容でした。
私が認識を新たにしたのは以下の点です。
・ホテリング効果とは米国の経済学者ハロルド・ホテルングが指摘する現象で、2大政党のもとで政策が似通ってくることで、これは票を多く獲得しようとすると自然とそうなるということでした。たしかに自民党も、民主党も「市場原理の行き過ぎを是正する」「地方主権」「天下り・渡りの禁止」「世襲候補の制限」「官邸機能の強化」「教育費支援」「非正規雇用の正規化」などをマニフェストで言っており似ています。なお、市場原理批判に関しては、誰も市場原理万能と思っていないしそういう政策も打ち出していないので、まと外れと評価しています。
・財政悪化を「共有地の悲劇」理論で解説するというのも始めて知りました。共有地は厳しいルールがあって初めて存続するように、国債発行も厳しいルールがなくてはならないというものです。
・農家の戸別所得補償政策は、自民党政権で進んでいた農業の大規模化によるスケールメリットの追給と国際競争力の強化に、完全に逆行するものだと評価しています。
・財政出動の乗数効果については、モデルのレベルで様々に評価でき、クラウディングアウト・国際経済(マンデル・フレミング理論)・DSGEモデルなどを考えるとかなり小さくなるということです。計量経済モデルを使って「コンクリートから人へ」の政策の乗数効果を検証し、否定的に評価しています。
・アジア共通通貨についてですが、通貨統合の費用として通貨主権の放棄とそれに伴う金融政策の独立性放棄・国単位の通貨発行利益の放棄・為替調整による各国経済観の不均衡調整が不可能になるということがありますが、最後の点を克服するための最適通貨圏の条件(ショックの対称性・経済の開放度・労働の移動性)をアジア地域は満たしていないと評価しています。
・自殺増加の有力な原因は失業や破産と評価しています。
以上、私の知らないことが多く、大変勉強になりました。