私は1990年前後から TeX を使っている。私が使い始めた頃(主に学生実験のレポートを書くのに使っていたのだけど)、既存の入門書らしきものを買ってきて、ああでもない、こうでもない、あーもっと細かいことしたいけど、でも Knuth の TeX 本買うのもなあ……とやっていたときに刊行されたのが、この本の初版であった。「TeX っぽい体裁」を超えて、万人に見て美しいと思わせる文書を、本書の助けによってようやく思うように書けたことを、今も鮮明に覚えている。勿論それは、学部・修士・博士の各課程での論文作成にそのまま活かされたのだった。
あれからもう20年程が経つわけだけど、特に学術論文や低予算の出版などにおいて、TeX の存在意義は当時と比べて尚大きくなっているように思う。Microsoft Word の台頭で一時ユーザが減少した TeX だが、「Microsoft 依存構造からの脱却」という理念と、HTML 等によって論理的構造を反映した hypertext を記述することに慣れ、引用文献や図表番号などの管理のし易さから TeX を「再発見」する人々の登場で、今後も「エンドユーザが美しさと情報の有用性を享受できる組版ソフト」として活用されていくことだろう。
こういう TeX の魅力を享受したい方、日本語で書かれている本でまず一冊買うなら、迷わずこれである。この本の初版が刊行されたときから、TeX それ自身と同じく、この本の位置付けも変わらない。LaTeX を使いたいなら、まずはこの本を買え、なのである。