脳死とは、脳が死んだ状態で、脳死からの生存はありえない。だから、心臓が動いていても、それは取り出して移植に使うことができる。このあたりまでは、これまでの知識でわかっていた。しかし、もし判定が間違っていたら、移植を優先するあまり、脳死判定を急ぐ場合はないのか、など、医療現場に100%の信頼を置けないのも事実だ。
これは、脳死とはどのような状態を言うのか、また、どのように判定されているのか、ということが、よくわかっていないための疑問である。本書を読んでそう思う。
また、人工呼吸器をはじめとする医療技術の進歩によって、脳死状態から心停止までの時間が長くなってきていることや、脳死状態と植物人間状態の違いなどの説明は興味深い。
そして、脳死は科学的、医学的観点からだけでなく、文化的、社会的な観点からも捉えられなくてはならないと著者は言う。さらに、個人の考え方や感じ方によっても違ってくる。脳死すなわち固体死とする「脳死先進国」であっても、臓器提供となると、踏み切れない人もたくさんいるそうだ。このあたりは、何が何でも臓器提供者を増やそう、という論法ではなく、安心させられる面もある。
もし、あなたが万一脳死状態になったとき、ドナーとなるのかならないのか、迷っているなら一読の価値あり。