事件そのものはちょっと重苦しいものもあったりしながら、登場人物の軽妙な掛け合い漫才のような会話で救われる。主人公はかつて裏の世界で生きていた、しかし今は一介の寺男として暮らす有馬次郎、通称アルマジロ。ここに新聞記者の折原けいと、京都府警の税金泥棒といわれる警部が絡み、結局謎解きに至るヒントを出すのは大悲閣のご住職、という流れになっている。それしきのヒントでなぞが解けちゃうんだ・・・と思わなくもないけれど、さすが、北森鴻は「おいしい」小説を書いてくれる。有馬次郎と折原けいがいつも”捜査会議”を開くのが、寿司割烹・十兵衛。京都だけあって、素材を生かしたシンプルかつ繊細な料理の数々。読んでるだけで、垂涎もの。香菜里屋シリーズとはまた違った”おいしさ”を味わえる小説。